e-LOUPEの旬ネタコラム

  • 新築戸建て

ホームインスペクションは新築でも必要!メリットやタイミングをご紹介

2023.06.25
岩井

WRITER

岩井 数行

二級建築士 e-LOUPEインスペクター

建築事務所を経て2010年に株式会社テオリアハウスクリニック入社。床下調査や断熱事業での現場経験を活かし、現在は戸建て住宅インスペクション事業に携わる。JSHI公認ホームインスペクター。既存住宅状況調査技術者。蟻害・腐朽検査士。

今回は「新築のホームインスペクション」というテーマでお話ししていきます。

もともと中古住宅の流通を目的として普及が進められたホームインスペクションですが、最近では新築でのご依頼も急激に増えてきている印象です。

これは新築住宅でもホームインスペクションを実施することに大きな意義があることを考えると当然の結果だと思っています。

ぜひ新築ホームインスペクションについて一緒に勉強していきましょう!

新築でもホームインスペクションが必要な理由

建築時の検査では品質保証できない

新築ホームインスペクションについてよく聞くのが「家を建てるときに検査をしてるんだから改まってホームインスペクションする必要があるの?」という声です。

確かに新築住宅は建築の際、中間検査、完了検査を行う(自治体もしくは指定確認検査機関にて)ことが法律で義務付けられています。

ただしその検査内容は非常に限定的で、図面通りに建築されているかを目視可能な範囲で確かめる程度のものです。

建築時の検査は「品質を目的とした検査」とは言えません。

ホームインスペクションのような建物の不備などを細かくチェックする検査とは全く性質が異なるのです。

新築でも「不備がない保証」はない

新築住宅の売主は引き渡し後10年間、その建物の瑕疵について必ず保証しなくてはなりません(瑕疵担保責任)。

そのため「万が一不具合があっても安心」と思われがちです。

しかし実は落とし穴があります。

瑕疵担保責任は「不備が無い事の証明」ではありませんし、保証してくれるとはいっても具体的にどんなことをする必要があるかまで具体的に定められているわけではありません。

売主によっては対応がずさんでちゃんとしたサポートが得られない可能性もあるのです。

高価格な建物ほどリスクが増す場合も

住宅によくあるイメージで「○○ホームは一流だから大丈夫」「注文住宅だから大丈夫」というものがあります。実際、仲介業者の方もこのような説明をよくされます。

確かに価格帯の高いメーカーは安いメーカーに比べると不備が少ない傾向はあります。しかし実は、むしろ不備のリスクが増してしまう場合もあるのです。

例えば特殊な設計や珍しい設計を取り入れている建物の場合、どうしても不備が生じやすくなる傾向にあります。

私の経験の上でも、費用の高い安いに関係なく大半の物件で何かしらの不備は存在しています。

実際に目の前の建物を確かめないことには、指摘事項がないとは言い切れないのです。

新築ホームインスペクションのメリット

自分では見れない場所までプロがチェック!

建物のチェックをするにもどこを見れば良いのか判らず、指摘できるのはせいぜい壁や床のキズ程度・・・という方がほとんどです。

ましてや床下や小屋裏、屋根ともなると特別な知識や経験を持っていないと自分で調査するのは現実的とは言えません。

しかしそういった場所ほど何かしらの不具合が潜んでいるもので、新築も決して例外ではありません。

  • 雨水の染み
  • 屋根の割れ
  • ビスのつけ忘れ
  • 床下の水漏れ

・・・などなど、様々な不具合を見てきました。

ホームインスペクションを通してプロの手による確認を隅々までしておくことで、気持ちよく引き渡しを受けることができます。

施工店・仲介業者の対応に変化が

建築にトラブルは付き物です。

過去のお客様でも「打合せの質問に対してほったらかし」「その場しのぎで適当に扱われた」といった担当者さんとのトラブルや、「施工の仕様と異なっていた」というような建物の問題など、理由は様々です。

最初は些細なことでも、それらが積み重なって不信感を覚えるケースが多いようです。

しかし建築前や建築中に「完成時にホームインスペクションを入れる」と不動産会社に伝えればそういった態度に変化を促すことが期待できます。

建築するのは人ですから、後にチェックが入ると知れば、気を引き締めて作業してくれるでしょう。

また、多くの現場監督は複数の物件を管理していますので、忙しさから、ほとんど建築現場に顔を出さないなんてことが起こります。

それが、事前にホームインスペクションを入れると伝えたことによって、現場監督も心配でこまめに施工状況を確認するようになるでしょう。

完成後に不具合を見つけるよりも、できれば施工自体を丁寧にしっかりと行ってもらうのがなによりですから、事前に伝えておくのは重要です。

「待ち時間」もメリットになる理由

ホームインスペクションは建物に不具合がないか、じっくり3,4時間ほどの時間をかけて隅々まで見て回ります。

実はこの「時間がかかる」ということが買主にとって大きなメリットとなり得ます。

そもそも内覧会には建物に問題がないかの最終確認という意味合いがあります。

しかし実際は部屋の造りの確認や設備の使い方の説明といった形式的なやり取りだけで終わってしまい、物件をしっかり見れるタイミングはそう多くありません。

ホームインスペクションを実施するとなると、前述した一通りの売主とのやり取りが終わってからホームインスペクターが検査を完了するまでに1,2時間ほどの余裕が生まれます。

この時間を利用すれば、

  • 施工店や仲介業者に気になったことを質問
  • 建物の寸法を実測してレイアウトを考える
  • 自分で建物を見て回って傷や汚れを確認する
  • オプション工事の説明を受ける

通常の内覧会ではできないようなことをじっくりと行うことができます。

ホームインスペクションを通して、内覧会そのものの満足度を高める事が可能なのです。

「言いにくい指摘」も建築士が代弁


誰でもダメな部分を指摘するのは気が引けるものです。

特に気の優しいお客様ほど、施工会社との今後の関係性を気まずくしたくないとの思いから不具合の是正について伝えることをためらってしまいがちです。

ホームインスペクションを活用すれば、そのような問題を防ぐことができます。

自分では遠慮して中々言えないようなことも建築士でもあるホームインスペクターの口から直接業者に伝えられますし、これまで私が指摘した不具合は多くの業者がスピーディーに対応してくれました。

そのことから、「住宅の不具合を専門家から不動産会社に伝えてもらえて助かった!」という感謝のお声をたくさんいただいています。

診断結果の報告書は将来の財産!


日本の住宅業界の課題ですが、これまでは家を売却する際、築年数だけで価値なしと判断されることが当たり前とされてきました。

しかし近年では、リフォームやホームインスペクションの結果を売却の際に考慮する流れが生まれてきました。

実際にホームインスペクションを実施した物件において、近隣の相場よりも高く売却出来たという実例も出ています。
買主にすれば、住宅の検査履歴があるというのは、購入の大きな安心材料になるからです。

番外編:新築祝いのギフトとしても

ホームインスペクションを新築祝いのプレゼントに活用する方がいらっしゃいます。

印象的だったのは、会社の社長さんが社員さんの新築祝いに活用されたケースです。

私も知った時には、気持ちがほっこりしました。

きっと、お家の10年目や20年目の節目で診断報告書を活用するたび、良い思い出として感謝されると思います。

新築ホームインスペクションで分かる指摘事項

外回り

基礎の通気網に隙間(左上)、サイディング継ぎ目シーリングの欠損(右上)、樋の詰まり(左下)、配水管取合い部の周囲に隙間(右下)

外回りの調査では

  • 窓と外壁との接合部に剥がれや割れがないか
  • バルコニーの防水層にはがれや割れがないか
  • 屋根スレートの塗装にはがれがないか
  • 基礎の配筋は図面通りか

などの項目を確認します。調査には打診棒や高所カメラ、鉄筋探査器といった機材を使います。

室内

施工不良による床の盛り上がり(左)、窓サッシにビスが入っていない(右)

室内の調査では

  • 各部屋の傾斜に異常はないか
  • 照明や換気扇などの設備は正常に動作するか
  • 排水管からの水漏れはないか
  • 浴室の換気ダクトに異常はないか

などの確認をします。

傾斜の測定はレーザーレベルや水平器を用いて全ての部屋で行なわれます。

床下

床下の浸水(左上)、基礎のクラック(右上)、コンクリートの施工不良によるジャンカ(左下)、落ちかけの断熱材(右下)

床下は外からは見えない場所であり、その分多くの不具合が潜んでいる場所でもあります。

床下の調査では

  • 木材にカビや腐朽がないか
  • シロアリの被害はないか
  • 配管から水漏れはないか
  • 断熱材に不具合はないか

などを確認します。

点検口からの調査(左)と進入調査(右)

床下の調査には調査会社やどのオプションを選んだかによって点検口から床下をのぞくだけの調査の場合と、床下に直接進入しての全面調査の場合とがあります。

調査結果の信頼性を上げるには床下に直接進入しての全面調査がおすすめです。

小屋裏

金物ビスの緩み(左上)、天井断熱材の隙間(右上)、野地板のシミ(左下)、ナットの緩み(右下)

小屋裏の調査では

  • シミや漏水跡がないか
  • 金物部分にゆるみや錆はないか
  • 断熱材に不具合はないか
  • 木材に腐朽はないか

などを確認します。

天井点検口からの調査(左)、小屋裏への進入調査(右)

床下の調査と同様に、点検口からのぞくだけの場合と小屋裏内部に直接進入しての調査を行う場合とがあります。

やはりおすすめは内部に直接進入しての全面調査です。

ずさんなインスペクション業者を選ばないコツ


全てのホームインスペクターは建築士の資格を保有しています。

しかしたとえ建築士であっても、すべての人がホームインスペクションという仕事に精通している訳ではありません。

検査内容も多岐にわたることから、知識や経験がとても重要です。

経験・知識が豊富な建築士が在籍してるかを見分けるポイントをお伝えします。

検査技術向上の為の施設を保有しているか

e-LOUPEでは戸建住宅2棟、技術研修施設を保有

ホームインスペクションは2018年に義務化されたばかりということもあり、検査内容や検査道具もまだまだ精度を高める段階にあるサービスです。

技術力の向上を図る姿勢は、検査の内容も期待でき、そのための施設の保有は重要な基準になります。

ホームインスペクター(診断士)は正社員か


雇用形態であまり知られていないのが、正社員と斡旋のホームインスペクターがいるということです。

私も不動産業者さんから「このまえのホームインスペクターは早く帰ってしまった」とか「同じ会社でも来る人によって当たりハズレがある」などと言われることがよくあります。

これは正社員と斡旋の違いが影響しているのかもしれません。

斡旋の場合、1棟あたりで報酬が決まっているのに対して、正社員のインスペクターは固定給ということもあって、目の前のお客様に落ち着いて向き合える傾向があるというのも事実です。

また、満足度の点で言えば、ホームインスペクターのコミュニケーション能力の違いによって圧倒的な差を感じるようです。

早く帰ってしまったインスペクターも検査に不備はなかったとしても、その後の説明などでお客様や不動産業者さんの満足を得られなかったのだと思います。

第3者としての透明性があるか


ホームインスペクションは、新築住宅の買主と不動産業者の中立な立場で行うことに意味があります。逆にいうと、その関係性が崩れるようであれば調査そのものの信頼性が大きく揺らぎかねません。

ホームインスペクションの歴史が長いアメリカでも、不動産会社と検査業者の癒着が問題視されていた過去があります。

私自身も仲介業者から「検査結果のこの部分は黙っていてもらえないか」と指摘事項を都合よく変えるように言われた経験があります。

そういった提案は当然お断りしていますが、不動産会社と提携している検査会社の場合そうはいかないかもしれません。

少し面倒であっても、ご自身が納得できる検査会社を見つけ、第三者の立場でしっかりと調査してもらうことをお勧めします。

新築ホームインスペクションの注意点

不動産会社に調査を断わられるケースも!?

いまだに、ホームインスペクションを入れることに対して何かしらの理由をつけて断ってくる不動産業者がいます。

「新築時にインスペクションを入れたい」と不動産業者へ伝えたところ、「完了検査や瑕疵保険の検査が実施されているので大丈夫です!」「お金が無駄ですよ。」と半ば断られたという相談を時々耳にします。

また、不具合が見つかったとしても対応はしないと言い切って相談段階から拒否反応を示すケースもありました。

実際に住む前から、そのような反応の業者であれば、住んでからの対応も期待できませんので、家の購入についてもいったん冷静に考え直すことも必要だと思います。

特に2018年に義務化された当初、不動産業者の多くはホームインスペクションの理解が乏しく、私も検査しているとあからさまにイヤな顔をされました。

しかし、最近はホームインスペクションが業界でも浸透してきたこともあり、むしろ協力的な不動産業者さんがほとんどです。

相性のいい服装選び

内覧会では建物をあちこち歩き回る事になりますし、床にしゃがんだり棚の上を覗き込んだりといった動作も想定されます。

汚れてもいいものや動きやすい服装をされるのがおすすめです。

また、冷暖房機器が設置されていないケースが多いことから季節によっては暑さ寒さ対策もしておくといいでしょう。

あると便利な持ち物


新築の物件では浴室などを除いて照明が設置されていません。

暗い場所もありますので、傷の確認や部屋の状況の確認ができるライトやスマートフォンがあると良いでしょう。

スマートフォンであれば。写真の記録を残す事もできます。

その他には傷や汚れの目印となる付箋や、部屋の大きさを測るメジャーがあると役立ちます。施工店側で用意してくれている場合もありますが、念のため自分たちでも用意しておくと安心です。

また、それらの結果をメモする図面も用意しておくといいですね。

小さなお子様の対策

お子様と一緒に新築ホームインスペクションにご参加される場合、年齢によって工夫をした方がいいでしょう。

インスペクションの時点では床のクリーニングが終わっていない場合もあり、まだ小さいお子さんがいらっしゃるのならレジャーシートのような敷物があれば座ったりしても安心です。

幼稚園から小学生位の子供の場合、新しい綺麗な家で大はしゃぎして転倒したり物を壊したり・・・という事も考えられます。

おもちゃやゲーム機など、子供が飽きない工夫をするのがおすすめです。

また、スリッパは大抵の場合大人サイズしか用意されていません。お子さんも一緒に来る場合は専用のスリッパも用意しておくといいでしょう。

さいごに

今回は新築のホームインスペクションについて詳しくお話ししてきました。(ホームインスペクション全般についてはこちらのページでも解説しています)

やはり住宅購入は一生に一度のことで、新築住宅であればなおさら後悔はしたくないというのが心情だと思います。

私自身がホームインスペクターを目指したのは、不動産業者とお客様の情報格差を埋めて、後悔の無い住宅購入をしてもらいたいという理由からです。

今回ご紹介した情報をぜひお役立てていただければと思います。

最後までお読みくださりありがとうございました。

e-LOUPEトップページへ
e-LOUPEの診断内容
過去の診断事例集
e-LOUPEの診断料金
e-LOUPEお問い合わせフォームへ

 

「見えないところへの徹底した追求」がe-LOUPEの基本方針です。