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ホームインスペクション|住宅診断 依頼の注意点【完全版】

2021.12.02
大原

WRITER

大原 卓也

一級建築士 e-LOUPEインスペクター

建築設備会社を経て、株式会社テオリアハウスクリニックに入社。2013年より住宅インスペクション事業に携わる。住宅調査以外にも、不動産会社向けセミナーや建築士対象の研修会の講師も行う。JSHI公認ホームインスペクター。ドローン操縦士。

こんにちは。e-LOUPE(イールーペ)の大原です!

住宅を購入する場合、私たちのような建築士に調べてもらうのがホームインスペクションですが、詳しい内容についてはあまり知られていません。

今回は一級建築士で、毎日さまざまな建物を診断している私の経験を織り交ぜ、ホームインスペクションの内容のほか、費用や依頼の仕方について、本音で解説します。また、知っておくと大変お得なこともありますので、ぜひ参考にしてください!

ホームインスペクションとは?

屋根の調査
ホームインスペクションとは、素人では判らない住宅の問題を、住宅診断士(ホームインスペクター)と呼ばれる専門家が調査する住宅診断サービスです。

住宅診断士は住宅会社とお客様の「中立な立場」で建物診断することを使命とし、決してリフォームや住宅の購入を勧めるようなことはしません。

あくまで住宅の欠陥や劣化、改修が必要な箇所を知ってもらうことに力を注ぎ、良い所も悪い所も含め、調査で得た内容を正直にお客様へお伝えします。

なかには、住宅販売会社から斡旋されたり、リフォーム業者が無料で行うホームインスペクションがありますが、「公平な立場」という観点で言えば、ホームインスペクションの趣旨とは少し違ったものだと認識が必要です。

すでに欧米では一般的なホームインスペクションですが、日本では2018年に不動産会社でホームインスペクション斡旋の告知義務化によって、広く知られるようになりました。その結果、中古住宅購入時に活用される以外にも

  • 新築住宅の購入時
  • リフォームか建て替えの判断
  • 住宅の保証が切れる前(10年目)

など、様々な状況で活用され、中古・新築のどちらでも、住宅購入時に行うことは一般的になりました。一生の高い買い物と考えれば、多くの方が行うようになったのも当たり前の状況だといえます。

ホームインスペクションを「行わないと損!」な理由

浴室
ホームインスペクションを活用するメリットは大きく分けると2つあります。
その一つが、「住宅会社とのトラブルを未然に防ぐ」ことです。

住宅購入時やリフォームでは、住宅会社との間で様々なトラブルが起きる可能性があります。

トラブル① 意外と多い軽微な欠陥 

ビスなし
軽微な欠陥の例:ビスがない

明らかな住宅の欠陥だけではなく、微妙に気になる不具合など、素人ではどこまで指摘していいものなのか判断が出来なかったり、今後の付き合いを気にして言いにくいなんてことが実はよくあるのです。

内覧会では営業マンの説明を受けて、壁紙の傷程度の指摘で終わったなんてよく聞きます。

そんなときこそ、住宅診断士が心強い味方になってくれます。屋根裏のボルトのゆるみなど、自分では気づけないものや言いにくいことも、インスペクターが事実を淡々と伝えてくれることで、住宅会社も引渡し前であれば、急いで修繕します。

これが引き渡し後だと、後回しにされたり、構造には問題ないなどの理由で対応してくれない可能性もあります。そもそも、お客様自身が内覧会で屋根裏や床下の問題まで気づくことは不可能です。

トラブル② リフォームで予算を大幅に超える請求


住宅購入時以外でホームインスペクションの依頼があるのは、実家をリフォームして住み続けるか、建て替えするか悩んでのご相談いただくケースなどです。

もしリフォーム会社に相談すれば、どのような提案になるかはご想像の通りです。結果的には、不要なリフォームまで勧められて、予想以上の金額になってしまい、建て替えても良かったなんてことも。

ホームインスペクションを依頼されるお客様は、本当に傷んだ部分から修繕の優先順位を検討されて、報告書を基にリフォーム業者に相談されるので、無駄な費用を掛けずに済ませることが可能になります。

インスペクションはとってもお得?


このようなトラブルは小さいものなら、ほとんどのお客様が経験されています。新築であっても、ビスが無かったりボルトが緩んでいたり、誤った部材の取り付け方が見つかったりします。むしろ何も問題がない家が無いくらいです。

また、住宅の問題の多くは屋根裏や床下で発見されるのです。それなのに多くの診断会社は価格を安く見せるために、屋根裏や床下の検査を別料金にしています。

本音を言えば、多くの問題が発見されるのにオプションなのは業界の課題だと考えますが、たとえオプションだったとしても皆さんには必ず検査されることをお勧めします。

余談ですが、過去のお客様からインスペクションを依頼して「得をした」と言われることがありました。

その理由が、

  • 建てる前からホームインスペクションを入れることを住宅会社に伝えていたから、建築中も丁寧に作業してくれた
  • ホームインスペクションを入れることを伝えたとたんに、住宅会社が改めて自主検査を行い、ついでに床下や屋根裏の掃除までしたようだった

 

これらはあくまでも参考例ですが、ホームインスペクションを入れることで、住宅会社も緊張感を持って対応してくれるのは事実です。

また、気の優しいお客様からは「自分では強くは言えなかっただろうから、代わりに言ってくれて助かりました」と、ホッとした様子で感謝されることが多々あります。自分で言うのはイヤな気分でしょうし、専門家が伝えたほうが住宅会社も迅速に対応してくれます。

ホームインスペクションを実施しておけば売却時も有利に!

立て付けの調査
ホームインスペクションで後々、重要になってくるのが「診断報告書」です。

なぜなら、一般のお客様が住宅会社と対等な立場で話せたり、将来、住宅を売却される場合、有利な条件を引き出すことができるようになるからです。住宅購入時にホームインスペクションを行う2つめのメリットは、将来、大きなリターンが期待できることです。

住宅購入時のホームインスペクションが「売却時にお得になる」


住宅購入当時の状態や修繕の証拠を専門家の記録として残すことで、将来の売却時には有利な条件を引き出すことが可能になります。なぜなら、家そのものだけではなく、住んでいたお客様自身の信頼にも繋がるからです。

次に購入されるお客様の気持ちを考えてみてください。

過去の記録があるということは、家を大切に考える人だったと想像できますし、安心感が全然違います。購入する側からすれば、多少の金額差があったとしても、そちらを選びたくなるのは当然です。

こちらの話しとは少し違いますが、ある大手住宅メーカーのお客様で、新築時からの定期点検やシロアリなどのメンテナンス記録をすべてファイルにしていたことで、相場よりも大きな差額で売却できたそうです。

ホームインスペクションは建築士が行った、信頼度がさらに高い記録ですから、大切に保管しておきましょう。

また、気をつけないといけないのは、報告書が別料金の診断業者があるということです。住宅購入時に問題が見つかりさえすれば良いと考え、数枚程度の簡易な報告書で済ましてしまう会社がありますが、大変もったいないです。しっかりとした検査報告書が検査料金に含まれているか、必ず確認しましょう。

本当に必要なリフォームが計画的に出来る


年数が経過した中古住宅を購入した場合、ホームインスペクションで住宅の欠陥や劣化を調べることで

「雨漏りが発生している」
「シロアリの被害が見つかった」
「屋根に破損があった」

など、住宅の状態を正確に把握する事ができます。

このような明らかに修繕が必要な箇所がわかるのと同時に、経年劣化の現状を知ることもできます。その結果、予算に応じて、メンテナンスの優先順位を計画することができ、リフォーム業者の言いなりにならずに済みます。

ホームインスペクションの検査結果を基に相談されれば、リフォーム業者も簡単には不要な工事を勧めにくいでしょう。当然、ホームインスペクションの検査報告書と一緒に、メンテナンスの記録も保管しておくことが後々のメンテナンスのためにも大切です。

ホームインスペクションの依頼はいつすればいいの?

インスペクションのタイミング
ホームインスペクションを頼むべきベストタイミングは2つです。

①:売買契約の直前
診断結果によっては購入を見送るつもりであれば、売買契約をする直前のタイミングです。

特に中古住宅の購入ではこちらのパターンです。なかには契約直前にホームインスペクションを入れることを断る不動産会社があります。

理由はいくつかあるのですが、いずれにしてもそのような不動産会社から購入するのは、あまりお勧めできません。むしろ許可してくれる不動産会社であれば、信頼度も評価できますし、建物の劣化状況によってはメンテナンスに応じてくれるかもしれません。

②:引渡し前の内覧会
購入することを前提としているならば、引渡し前の内覧会に同行して検査するのがいいでしょう。こちらは主に新築住宅購入の場合です。

お客様自身で確認できる壁紙の傷などをチェックしているあいだに、住宅診断士は建物全体の検査を行います。建物の状況にもよりますが、通常3~4時間は掛かりますので、不動産会社には必ずホームインスペクションを行うことを事前に伝えておきましょう。

ホームインスペクションで準備しておくもの

資料の確認
ホームインスペクションを依頼する際は、以下の資料を準備しましょう。

  • 平面図
  • 立面図
  • 短計図
  • 基礎伏図
  • 小屋伏図

ホームインスペクションをするにあたって、可能な限り建物の状況を事前に把握しておくことが、当日の検査の精度を高めることに繋がります。住宅診断士は3~4時間の限られた時間の中で、全ての状況を確認する必要があるからです。

当日は持参するのが当然ですが、出来ればメールなどで事前に診断士に提出しておくことがお勧めします。その場合、当日は現地の検査に集中してもらうことが出来るからです。

とはいえ、資料が残っていなかったり引継ぎがスムーズに行えないといった理由で、全ての資料をそろえることが難しい場合もあるかもしれません。

その場合、せめて間取り図だけでも揃えておくと良いでしょう。

ホームインスペクション問合せから完了までの流れ

ここで、お申し込みから検査完了までの大まかな流れをご紹介します。

お問い合わせ

電話やメールで問合せる際に、何を伝えたらいいのかが疑問だと思います。

まずは①診断してほしい物件の住所と希望日を伝えてください。

人気の診断会社だとすでに予定が埋まっている可能性があるからです。特に土日祝日はご依頼が集中するので、なるべく早めに連絡するか、平日に設定されることをお勧めします。

訪問が可能だと分かれば、

②ご自身の連絡先
③住宅購入、リフォームを検討など、どんなタイミングなのか
④新築、中古、構造(木造・鉄骨)築年数などの建物の状況
⑤総床面積
⑥図面の有無
⑦気になっていること(不動産会社のことなど)

これらを伝えて、料金を確認してください。

このとき気をつけるポイントは、基本料金に何が含まれているのか必ず確認することです。多くの検査会社が「床下や屋根裏の調査」や「検査報告書」が別料金です。

料金に納得でき、ご依頼が決定したら、図面は事前にメールで共有しておくと、当日は検査がスムーズです。また、見積書などの書類は事前にメールで送られてきます。

ホームインスペクション当日


よほどの悪天候でなければ、基本的に検査を実施します。

まずは、住宅診断士から検査の内容について説明があります。もし事前に知りたいことがあれば、その時点で遠慮はせずに相談しましょう。

ただし、診断中は付きっきりでコミュニケーションを取るお客様もいらっしゃいますが、必要以上には控えることをお勧めします。住宅診断士には診断に集中させて、最後に全ての状態を教えてもらえば無駄な時間が発生しません。お客様対応に時間が取られて、次のお客様を大幅に待たせてしまったなんてことも起こるかもしれません。

診断が完了すれば、タブレットを使って写真で状況の報告を受けます。このとき不動産会社の担当者がいれば、問題点を住宅診断士から直接、伝えてもらいましょう。建築士の資格を持った専門家からであれば、ほとんどの不動産会社ではスムーズに対応してもらえます。

また、過去の事例では、外壁の部材の取付が数ミリ傾いて気になっていたお客様がいらっしゃいました。このくらい仕方がないのかと諦めていたようですが、住宅診断士の私も気になることを不動産会社に伝えてあげると、修繕してもらえることになり大変感謝されました。

このように、お客様自身では判断が出来ない微妙なことがあります。また、不動産会社と今後の付き合いを考えると言いづらいなんて考えてしまう方ならば、ホームインスペクションの活用は大変お勧めです。後ほど解説しますが、このようなことからも住宅診断士の人柄やコミュニケーション能力は、かなり重要になります。

診断報告書が届く

検査当日は写真や口頭で説明がありますが、それらの結果をとりまとめた、診断報告書が数日後に発行されます。(e-LOUPEならメールデータとファイルに綴じた報告書の両方を提出いたします)

基本的な調査内容は共通ですが、検査会社によって、報告書の内容やボリュームは違います。そもそも診断報告書が別料金の検査会社もありますので、確認が必要です。

診断報告書は、将来のメンテナンスや売却時に大変役立ちます。紙とデータの両方で受け取っておけば、万が一紛失した場合も安心です。

ホームインスペクションは、なにを調査するの?

ホームインスペクションの調査項目は沢山あります。
ここでは、住宅診断士の調査の仕方やどんな部分をチェックするのか主要な部分に絞って解説します。

外回りの診断
通常、最初に外回りからのチェックです。
屋根
高所カメラで撮影

高所カメラ

樋の堆積物

破損やズレ、変色の状態、雨どいの汚れなどをポールに取り付けたカメラで撮影し、お客様にも確認していただきます。

基礎
鉄筋探査機

鉄筋探査機による調査

ひび割れの調査

基礎の中にある鉄筋の間隔が基準通りか、専用の機械を使って確認できるので安心です。

外壁
ビス
ビスの締め付けが不十分
モルタル

化粧モルタルの雑な仕上げ

外壁の継ぎ目が正しい処理がされているか、また中古住宅の場合は劣化状況を主に確認します。

そのほか、意外と盲点なのが設備取付のボルトが緩んでいたり、配管取付の壁の穴の処理が雑だったり、一般の方ではまさかと思われるような部分も丁寧にチェックします。

室内の診断
レバーの外れ

レバーの外れ
水栓

ポップアップ水栓が作動しない

外回りが終われば室内に入って診断です。

床下
根太の欠きこみ

根太の欠き込み
断熱材

落ちかけの断熱材

防具を装備して、台所の床下収納庫などから床下に入ります。床下がどうなっているかは家を建築した業者さんの性格や実力が一番わかる部分とも言えます。最近は少なくなりましたが、ペットボトルや材木の破片が置いたままなんてこともあります。見えない部分なだけに様々な問題が見つかります。

配管のズレ、柱のゆるみ、基礎のひび割れ、断熱材の設置状態、シロアリなど、チェック項目は多く、ここは入念にチェックが必要です。

天井裏
ナットの緩み

ナットの緩み
水シミあと

水染み跡

柱の状態や金具のゆるみはもちろんのこと、雨漏れによる染みがないかなど、床下同様に問題が見つかることが多いため、丁寧に確認します。

シロアリ探知機
シロアリ探査機
床下に入っても、白蟻の被害がわからない玄関ドアの木枠などは、電磁波の機材を使って確認します。
床の傾き
傾きの調査

水平器
レーザーレベル

レーザーレベル

床の傾きを機材を使って確認します。

その他にも、水道や換気扇、火災報知器など、設備の動作確認を隅々まで行いますので、お客様が見つけられなかった、室内のキズを発見することもあります。

以上のように、ホームインスペクションとは、「図面を基に隅々まで見たり触ったり、時には機械を使って現在の状態を把握する」ことを言います。当然、点検口がなかったり、大きな家具が障害になって診断が出来ないこともありますが、あくまでも建物の現在の状況を維持した状態で「目視できる範囲」を診断します。

ホームインスペクション業者の選び方

ホームインスペクションの価格は「安く見せる料金設定」にしていることが多く、非常に分かりづらいです。

屋根や床下、屋根裏の調査を含めていくらなのか。報告書は基本料金に含まれているか。トータルの料金を確認する必要があります。ただし、一般的に住宅は数千万円もする高い買い物です。

この数万円の安さだけで決めるのではなく、品質の差で選ばれたほうが後悔することもありません。

インスペクション業者の評判の見分け方

口コミは一定の参考になるので要チェック!

ホームインスペクション業者の品質ことを良く知っているのは、実は住宅販売会社だったりします。多くの建物を販売している実績がある会社であれば、すでにいくつかのホームインスペクション業者を見ているからです。

住宅販売会社から紹介してもらうことは止めたほうがいいですが、参考までに聞いてみるのは一つの方法です。また、Googleの口コミ情報は一定の参考になるので必ず見ることをお勧めします。

選ぶ基準で一番重要なこと

ホームインスペクション業者選びでは価格や検査内容以上に、実は一番大切なことがあります。それは「住宅診断士のコミュニケーション能力が高いか」です。

こちらの検査依頼の要望を理解し、知りたいことをわかりやすく確実に答えてくれる。また、自分たちに代わって住宅販売会社に問題点を指摘してもらう。報告書も専門用語ではなく、一般の人でも理解できるように記載されていないと困ります。コミュニケーション能力が低いと、こちらの満足感が圧倒的に下がります。

事前に調べることは難しいですが、電話対応やGoogleの口コミ情報などで、そちらも可能な限り確認してみてください。

ホームインスペクターの本音


業者選びに困った方が出来るだけわかりやすいようにと、ホームインスペクションを詳しく解説しましたが、いかがだったでしょうか。

文中で記した通り、ホームインスペクションは曖昧な価格設定や診断する人のコミュニケーション能力を含めたスキルなど、業者選びは大変難しいです。

実際に他社で不満だったからと、改めて自社に診断を依頼される方もいらっしゃいます。この解説が後悔の無い業者選びのお手伝いになり、もしイールーペとご縁があったら嬉しいです。

 

「見えないところへの徹底した追求」がe-LOUPEの基本方針です。