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ホームインスペクション|住宅診断を依頼するときの注意点【完全版】


WRITER
大原 卓也
一級建築士 e-LOUPEインスペクター
こんにちは。e-LOUPEの大原です。
突然ですが、あなたは「ホームインスペクション」をご存じですか?日本でもつい最近使われるようになった言葉です。
「何それ?」と思われる方がまだまだ多いと思います。
しかし、ホームインスペクションが何なのかを知っているだけであなたの家は
長く住むために修繕すべき場所がわかり
購入時のトラブルが起きにくくなり
売却時の売り値も落ちにくくできます。
この記事ではホームインスペクションについて
- 具体的なサービス内容
- 利用するメリット
- 費用の目安
- 利用する際の注意点
などをご紹介していきます。
”ホームインスペクションが何なのかよくわからない”
という方から、
”ホームインスペクションの実施を検討している”
という方まで、ホームインスペクションの理解、活用の参考にしてみてください。
目次
そもそもホームインスペクションって?
ホームインスペクションとは住宅に
- 欠陥
- 劣化
- 改修箇所
などがあるかを、確認する住宅診断サービスです。
中には「ホームインスペクション」の代わりに
- インスペクション
- 住宅診断
という言い方をする人もいますが、これらは全部同じものを指しています。
調査はホームインスペクター(住宅診断士)と呼ばれるプロが行い、建物の状態を細かく・正確に知ることができます。
そのことから
- 新築住宅の購入前
- 住宅の売却時
- 内覧会でのチェック
- 築10年目の点検
など、様々な状況で活用され、利用者も年々増加しています。
とはいえ、ホームインスペクションにはいくつかの問題点もあります。
例えばホームインスペクション業者同士の「サービスの内容や価格のバラつき」です。
ホームインスペクション会社を検討した時に
「どの調査を行えばいいのかわかりにくい」
と思われた方もいるのではないでしょうか。
e-LOUPEがシンプルな料金体系にしているのも、そのような現状を踏まえて
「わかりやすくホームインスペクションを活用してもらいたい」
と考えているからです。
ホームインスペクションは公平な立場で診断・報告をする
ホームインスペクションは「公平な立場」での住宅診断を行います。
そのため、「買主」「売主」のどちらかが有利になるような発言や行動は行いません。良い所も悪い所も含め、調査で得た内容を正直にお客様へお伝えします。
ですので
「リフォーム業者を勧める」
「住宅の購入を勧める」
といったことは行わずに、あくまで住宅の欠陥や劣化、改修が必要な箇所を知ってもらうことに力を注ぎます。
もちろん、調査結果に基づいてリフォームや修繕が必要かどうかアドバイスをする事はあります。しかし、これもあくまでも必要な改修ポイントについてのお知らせであり、ひとつの「目安」です。
客観的な診断と報告を行えるからこそ、ホームインスペクションは「信用性の高い情報」として信頼できるのです。
ホームインスペクションで様々なトラブルが回避できる
住宅購入時には買主との間で様々なトラブルの発生が考えられます。
具体的には
- 住宅の欠陥
- リフォーム費絡みのトラブル
- 床下・小屋裏の不具合
などです。
欠陥住宅

欠陥住宅とは設計図通りに作られていなかったり、大きな不具合がある家のことで、安全性・快適性・使用性の面において生活に支障をきたす住宅を指します。
- 雨漏りの多い住宅
- 外壁・内壁に亀裂や破損がある
- 床が傾いている
などは欠陥住宅の特徴といえます。
多額のリフォーム費用
中古住宅を購入する際に多くの場合で改修が必要になります。
改修する場所や状態によって必要となる金額はケース・バイ・ケースですが、予想以上のリフォーム費の見積もりを提示されて驚かれる方も多くいらっしゃいます。
なかには
「綺麗な家だから購入したのに、リフォーム費が高すぎる」
「売主からリフォームにこんなに費用がかかるだなんて説明されていない」
など、中古住宅購入後に売主と金銭トラブルに発展するケースがあります。
床下・小屋裏のトラブル
築年数や経年劣化の状況によっては、害虫や害獣が見えない床下や小屋裏で巣をつくって生息している可能性もあります。
特に床下トラブルで多いのはシロアリによる住宅被害です。シロアリに食べられた木材はスカスカになり耐久性が大きく低下してしまいます。
普段目につかない場所だからこそシロアリ被害が発覚後、売主と
「シロアリがいるなんて説明を受けていない」
「駆除費用は負担してくれるんだろう」
といったようなトラブルに発展することがあります。
トラブル回避には「ホームインスペクション」が最適!
こういったトラブルの存在を考えると、購入前の下見で「たぶん大丈夫だろう」と曖昧な判断をしてしまうことは危険です。
なぜなら
「思っていた家と違った」
「こんな不具合があるなんて聞いていない」
といった事は誰にでも起こり得るからです。
家はとても大きな買い物ですので「失敗した」となってしまう事態は避けたいところです。
そこで一役を買うのがホームインスペクションです。
ホームインスペクションでは、
- 住宅に欠陥・劣化はないか
- 改修が必要な場所はないか
- 床下や天井に異常はないか
などをプロの住宅診断士(ホームインスペクター)が調査・アドバイスします。
後々になってのトラブルを避けるためにも、住宅の購入を検討されている方はホームインスペクションの利用が賢明です。
ホームインスペクションが資産価値の維持にも繋がる理由
ホームインスペクションは住宅の不具合の有無を調べるサービスですが、
- 改修が必要な場所がわかる
- メンテナンスの計画が立てられる
ことから、「建物の資産価値」を維持する上でも大きな役割を果たします。
改修が必要な場所がかる
ホームインスペクションで住宅の欠陥や劣化について調べることで
「雨漏りが発生している」
「ドアの開閉がスムーズじゃない」
など、住宅の状態を正確に把握する事ができます。
すると
- 必要なリフォームは何なのか
- 費用の目安はどれくらいなのか
- 工期はどれくらいかかるのか
など、工事の計画を正確に組み立てることができます。
計画的に工事を組むことは、「生活している人」にとっても「住宅」にとっても大切です。
また、今後住宅を売買する機会があった際にも、しっかりと住宅メンテナンスを行いリフォーム工事を行っていたことが証明できると適切に住宅が管理されていたかどうかを判断する材料になります。
ホームインスペクションを受けて住宅メンテナンスの記録をとっておくことは、住宅の資産価値の高さや管理状態の良さをアピースする良い資料です。
アドバイスすることで先を見据えたリフォーム計画を立てることができます。定期的にメンテナンスを施して、災害に強い家作りを目指しましょう。
メンテナンスの計画が立てられる
インスペクション実施後は、住宅診断士が詳しくまとめた「調査結果報告書」がお客様の手元へ届きます。
この調査結果報告書を参考にして住環境を良くする計画を立てることができます。
より良い住環境で生活を送るためにも、備品や設備を定期的にメンテナンスする事はとても大切です。
また、メンテナンスした箇所の履歴は保存しておきましょう。なぜなら、ホームインスペクション時の「調査結果報告書」と、メンテナンスした箇所の「メンテナンス履歴」は住宅の資産価値を維持してきたことを証明する資料になるからです。
住宅の売却を行う時、これらの資料があるかどうかで建物の値段は大きく変わります。
ホームインスペクションを依頼するタイミングは?
ホームインスペクションを頼むべきベストタイミングは「申し込み後・契約前」です。なぜなら、金銭面における負担が一番少ないからです。
申し込み前は住宅の交渉権利がありませんし、たとえ行なったとしても他の人に先を越されてしまう可能性もあります。
かといって契約後では、万が一診断結果を受けて「契約を解消したい」となったとしても「契約時に支払った手付金」が戻ってきません。
「申し込み後・契約前」が、ホームインスペクションを頼むベストタイミングだといえるでしょう。
売買契約を結んだ後のタイミングですと、お家が実際に引き渡される前の「内覧会」に同行しての調査がいいでしょう。
内覧会でのホームインスペクションについてはこちらのページでも詳しく紹介していますので、検討されている方は是非一度ご覧ください。
▼内覧会の同行・立会いサービス(新築・一戸建て)をご希望される方に
https://www.eloupe-teoria.com/column/detachedhouse_preview/
ホームインスペクション前に用意しておきたい資料

依頼するホームインスペクション会社によっては必要な資料に違いがあるかもしれませんが、依頼するまえに、住宅の間取図や各種設備図を用意しているとスムーズに作業を進めることができます。
事前に住宅概要の分かる資料を揃えて、ホームインスペクション会社へ提出するのが一般的です。
必要な資料は、具体的には
- 間取り図
- 各種設備図・配置図
- 地盤改良している場合は地盤調査報告書や施工報告書等
などです。
これらの資料を当日までにホームインスペクターに提出する事で、当日の診断もスムーズになります。
新築・中古住宅関係なく、これらの資料を全て揃えるのは時間がかかりますので、もし、ホームインスペクション前に全ての資料を揃えるのが困難な場合には、せめて間取図と診てもらいたい部分の資料だけでも揃えておくと良いでしょう。


とはいえ、どうしても資料を用意するのが難しい場合も考えられます。
例えば、中古住宅だと
- そもそも資料が残っていない
- 引き継ぎがスムーズに行えない
などの理由で資料を揃えることが難しいケースがあります。
新築住宅でも全ての各種設備図や配置図等を集めるのはやはり時間がかかりますので、調査当日までに用意できない場合もあるかも知れません。
しかし、これらの資料は全て揃っていなくてもホームインスペクション自体は問題なく行えます。なぜなら、調査のベースになっているのはホームインスペクターの「目視調査」だからです。
図面がないとホームインスペクションが実施できないわけではありませんのでご安心ください。
ホームインスペクションにかかる時間

ホームインスペクションは、30坪の住宅で3時間かかると言われています。ただし、住宅の大きさや面積、診断する内容や範囲によって所要時間は変わってくるでしょう。もし、時間が無い場合には、予め依頼する業者へ連絡をとって調整する必要があります。
ホームインスペクションは、中古住宅売買の際に気になる「欠陥住宅」「設備の不備」「耐久年数」などの不安要素を取り除くために買主が行う場合がほとんどです。
万が一、欠陥住宅を購入した場合のリスク(金額など)を考えると、時間をかけてでも、購入前にホームインスペクションをする価値は充分にあるでしょう。
ホームインスペクションの流れ
1.お問い合わせ:ホームインスペクション業者へTEL・FAX・メール等で問い合わせます。
2.お見積:依頼内容を伝え、おおよその料金の確認を行います。
3.お申込み:料金の確認後、住宅診断日を確認しましょう。
4.必要書類の提出:各社異なりますが必要書類の提出を求められる場合があります。
5.ホームインスペクションの実施:現地でホームインスペクターによる住宅診断が行われます。基本的にご依頼者様も立ち会います。診断当日に結果を聞くことができます。
6.報告書:後日、ホームインスペクターによる報告書が届きます。診断内容を確認し、疑問や質問があれば問い合わせましょう。
7.料金の支払い:ホームインスペクション業者へ料金を支払いましょう。
上記はホームインスペクションを申し込んでから完了するまでの簡単な流れになります。
ほとんどの場合、現地でご依頼者様立会いの元で実施されます。
また、診断当日はホームインスペクションの結果を聞くことができます。疑問・質問がある場合には、ホームインスペクターに聞いて不安を取り除きましょう。後日送付される報告書でも疑問・質問があれば問い合わてみましょう。
ホームインスペクションの調査方法・調査範囲
ホームインスペクションの調査方法には、大きく分けて「目視調査」と「機材調査」の2種類があります。基本的に住宅診断は目視調査で行う場合がほとんどですが、より詳細な診断を希望する方には機材を使用した調査を行うことがあります。
目視による住宅診断
ホームインスペクション(住宅診断)はホームインスペクター(住宅診断士)による目視調査で行われます。
ホームインスペクターは、住宅の外周り・室内・床下・小屋裏・天井裏の状態や設備の状態などを目視によって各項目の状態を確認し、サービス内容によっては改修すべき箇所や目安の時期、おおよその改修費についてのアドバイスを行います。
ホームインスペクション当日に診断結果を聞くことは勿論、後日、報告書が提出されます。
小屋裏や床下に関しては点検口から覗いての目視と、直接進入して確認するケースがありますので、調査範囲に関しては事前に確認しておきましょう。
機械を使用した住宅診断

ターマトラックを使った調査
機材を使用した住宅診断は目視調査よりも詳細な結果を知ることができます。例えば、雨漏りの有無や住宅の傾き、基礎・外壁のひび割れ、コンクリート内部の鉄筋の状態などです。
- 住宅の傾きにはレーザーレベルや水平器
- 鉄筋の状態を知る鉄筋検査器
- 木材の水分含有率測定には水分計
- シロアリの詳細調査にはシロアリ探知機(ターマトラック)
などがあります。お客様が住宅のどの部分を詳しく知りたいかによって使用する機材は変わってくるので、ホームインスペクション前に依頼業者へ相談すると良いでしょう。機材調査をするメリットは、明確な数値を把握することができ、より住宅に問題がないかどうかの判断として精度が上がることです。
目視で調査できない場所は「調査の対象外」となる
ホームインスペクションによる調査範囲は「目視出来る場所」になります。
例えば、床下の調査は「点検口がない」「障害物があり奥まで見えない」といった場合には「調査対象外」となります。
機械を使った調査にしても、そもそも人が立ち入れない場所では行う事ができません。
これは天井・屋根裏や浴室等でも同じです。
また、居住中の住宅のホームインスペクションを行う場合にも、大きい家具(洋服箪笥や食器棚など)周りは診断できない場合がありますので注意しましょう。
ホームインスペクションの結果報告
調査会社によってホームインスペクションの内容が異なるように、調査後の報告もその内容や方法はまちまちです。
例えば、図面や写真を使って丁寧に説明してくれる事もあれば、口頭だけで終わらせたり、当日にはほぼ説明しない事もあります。
報告の内容も、軽微な事象や今後経年により生じるリスクは含まれない、という調査会社もあるので注意が必要です。
事前に「どんな報告をしてくれるのか」も頭に入れておいた方がいいでしょう。
ちなみにe-LOUPEでは調査後に次のような報告書を作成・送付しています。参考にご覧ください。
また、急ぎで購入の判断をする必要がり報告書の完成は待てないという時は、
- どの程度のことまで直接報告してもらえるのか
- 自分は建物のどこを気にしているのか
などをあらかじめ伝えておくと、当日口頭で教えてもらうことができます。
もし、調査結果を売り主の前で聞くのはちょっと気が引ける・・・という場合は、事前に報告の方法や場所を相談して決めておくといいでしょう。
ホームインスペクションの価格
ホームインスペクションには明確な価格基準が設けられておらず、ホームインスペクターが所属している会社によって異なりますが、目安として目視による診断で5万円前後、床下や小屋裏に直接進入する診断や精密機器を使う場合は10万円以上になります。
ホームインスペクションの利用前に依頼を検討している会社へ問い合わせて価格を確認しましょう。
また、出来れば床下や小屋裏といった普段確認することが出来ない箇所は点検口から覗くだけではなく、直接進入して調査してもらうことをおすすめします。なぜなら、そういった箇所こそ雨漏れやシロアリの被害、配管の漏水といった問題が起きていることが多いからです。
ホームインスペクション業者の選び方
ホームインスペクション業者は、
- 診断内容
- 信頼できる経験や過去の実績
- インスペクターの能力、
- 価格
などを参考に選ぶと良いでしょう。
診断内容
お客様がホームインスペクターに診てもらいたい内容によって業者を選ぶのが良いでしょう。
ホームインスペクション会社といっても、
- 住宅の設計や監理
- 耐震診断
- リフォーム
に秀でているなど、それぞれの会社で特色があります。また、依頼する住宅の構造に詳しいホームインスペクターが在籍しているのかどうか、これまでの経験や実績を確認することも大切です。

屋根裏や床下に入る業者は少ない!
信頼できるだけの経験や実績
信頼できるホームインスペクション業者を選ぶにあたって、これまでに携わってきた経験や実績は参考になります。依頼する住宅に似ている住宅を過去に診断していれば、住宅の構造からポイントを抑えたホームインスペクションが行われるでしょう。
診断の当日は「どういう人が診断してくれるんだろう・・・」と不安になる方が多いと思います。せっかく住宅の購入前や売却前にホームインスペクションを受けるのだから、信頼できるホームインスペクターに住宅の調査をお願いしたいですよね。
経験や実績を確認するのも勿論ですが、ホームインスペクターのコミュニケーション能力や説明の丁寧さにも注目してみましょう。信頼関係を築ける相手かどうか、結果を分かりやすく説明してくれるかどうかもとても重要です。
悪質業者には注意しよう
ホームインスペクションの価格は、目視調査であれば5~6万円前後、床下や小屋裏への進入、精密機器の使用などで10万円以上が相場とされています。
もしも、この金額から大きく離れている場合には格安・高額問わずに注意が必要です。
一部では、無料診断としてホームインスペクションを行う業者もいます。無料診断後に、耐震補強工事やリフォーム、外壁工事などを必要以上に強く勧めるケースがあります。無料診断と称してホームインスペクションを行い、診断結果を元に業者の利益となるような工事をお客様に勧めているケースもあります。
まとめ
ここまでインスペクションについて書いてきましたがいかがでしたか?
ホームインスペクションは日本で始まってまだまだ歴史の浅いサービスです。しかし既に欧米諸国では住宅の売買時にはホームインスペクションを行う事が当たり前となっていることからも、今後日本で普及していくことが予想されます。
ホームインスペクションは住宅を購入する際には知っておいて損のないサービスです。今後新しく住宅を購入されるご予定の方は是非ホームインスペクションを活用してみてください。