e-LOUPEの旬ネタコラム
- 中古戸建て
中古住宅に欠かせないホームインスペクション、メリットや指摘事項をご紹介
WRITER
鳥居 龍人
二級建築士 e-LOUPEインスペクター
こんにちは。e-LOUPEの鳥居です。
今回は中古住宅のホームインスペクションについてお話ししていきます。
中古の戸建て住宅購入を検討されている方にとってホームインスペクションの調査結果は心強い味方になってくれます。
実際の調査で発見した指摘事項などを交えつつ、詳しくお伝えできたらと思います。
中古住宅でホームインスペクションは必須な理由
中古住宅でホームインスペクションを行う最大の意義は建物の状態を正しく把握できることにあります。
この重要性は中古住宅という商品の性質を考えるとおのずと見えてくるのではないかと思います。
安さの代償で抱えるリスク
多くの中古住宅は外壁塗装、設備交換、シロアリ対策といった建物を保全するためのメンテナンスが行われていません。
これまでの調査で中古住宅の売主からは「我が家は何も問題ない、大丈夫。」という言葉を何回も耳にしましたが、その言葉には何の根拠もないケースが大半です。
特に小屋裏や床下で不具合が起きていることは売主すらも知らない場合が多く、購入後の中古住宅のホームインスペクションで構造部材に大きなシロアリ被害を発見した・・・というケースもありました。
引き渡し前の建物の全体的な確認は必要不可欠だと言えるでしょう。
新築と中古で大きく異なる「品質」の価値観
新築と中古住宅で大きく違うのはなんといっても売主の品質の価値観です。
新築住宅では外壁、屋根、壁紙、床、設備等の問題は基本的に売主が直してくれますし、壁紙の汚れや床のちょっとしたキズなども引き渡し前であれば直ぐに対応してくれます。
しかし中古住宅ではそういった対応は殆どありません。
基本的には現状引き渡しが一般的、傷汚れも「こういうものです」と言われ、設備が劣化していても「数年したら交換しないといけないかもしれませんね」と流されてしまいます。
ネットで中古住宅の雨漏りやシロアリ被害などのトラブル事例を調べてみると売主は「いや、中古なんだから多少の不具合は当たり前でしょ?」くらいの感覚の方が多い印象です。
これは仲介業者も同じで、売りたい側の意見だけを鵜吞みにして購入するのは少し注意が必要です。
ある築50年フルリノベ物件の裏側
築50年のフルリノベーション物件を調査した時の話ですが、その建物は古民家風な大きな開口のある住宅で設備機器や建具は全て最新鋭、見た目も流行にのっている、非常に羨ましい物件だなというのが最初の印象でした。
しかし施工店曰く、構造にかかわる部分は何もいじっていないとのこと。不安が頭をよぎり、やがてそれは確信に変わりました。
小屋裏には現行の建築基準を満たさない木を組んだだけの梁、床下は柱や木束が至る所でシロアリ被害に遭っている状態でした。
これでは万が一の地震での倒壊リスクが非常に高い、危険な建物と言わざるを得ません。
しかもどうやら施工店も状況は把握していたらしく、明言は避けていましたが要約すると「構造体には触れない契約の為、特段いじらなかった」と言っていて思わず唖然としてしまいました。
このように中古住宅では新築では起きないであろう事態も決して珍しくないのです。
事前の調査がリフォームの明暗を分ける
中古住宅をリフォーム前提で購入された方に多いのが「思ったよりもお金がかかりそう・・・」という悩みです。
業者の提案を聞いているうちに予算がどんどん大きくなり、「これだったら新しい家を建てるのと変わらないかも…」となってしまうことも。
また、年数が経過した建物ほど隠れた場所で不具合が見つかるケースが多く
「小屋裏で雨漏りしている」
「床下がシロアリ被害に遭っている」
「屋根材が劣化している」
などの想定外の修繕が必要なことが発覚し、本当にやりたかったリフォームに回すお金がなくなってしまった・・・というケースもあります。
ホームインスペクションでは建物全体の現状について、どこがどういった状態なのか、修繕の必要はあるのか、などを第三者の立場から報告します。
これらの情報は建物の改修計画を立てるのに非常に役立ちますし、「ホームインスペクションでこんな現状だと分かっている」と言っておけば不要不急のリフォームを勧められることもないと思います。
瑕疵保険調査がお得に
実はホームインスペクションを活用すれば、瑕疵保険の加入調査をお得に実施できます。
瑕疵保険の加入調査で調べる項目は各インスペクション業者の調査メニューとかなり重複することから、瑕疵保険への加入調査を単体で行う場合と、ホームインスペクションと瑕疵保険の加入調査を同時に行う場合とで費用がほとんど変わらないケースが多いのです。
ちなみに瑕疵保険の加入調査で分かるのはあくまでも「加入できるかどうかの判定」だけ。建物の状態を詳しく知ることはできません。
ホームインスペクションで充実した調査をしつつ、追加の費用をほとんどかけずに瑕疵保険の加入調査も実施する、というスタイルはとてもお得と言えます。
中古住宅の調査での指摘事項の例
外回りの劣化
屋根や外壁は自然災害や紫外線による影響を強く受けます。
前の持ち主がこのことを理解して定期的にメンテナンスを行ってくれているのが理想ですが、実際は何もせずに放置されて痛んでいる事がほとんどです。
屋根材が割れていて小屋裏を調べたら軽く雨漏りしていた・・・というケースも多く見受けられます。
よく見ると失われている防水機能
外壁を手で触ったとき、白い粉のようなものがつくようであれば要注意、これは「チョーキング」と呼ばれる塗料成分の分解によって起きる現象です。
チョーキングの発生は外壁が防水機能を失ってきていることを意味し、放置すれば建物の内部に雨水が侵入する原因にもなります。
ただし、いたずらに不安を煽って本来必要のない工事を迫る業者もいますので注意しましょう。
実はアブナイ壁際の植物
私がホームインスペクションでチェックするようにしている項目の1つに壁際の「植栽」があります。
あまり知られていませんが、実は植栽は建物にとってリスクになり得る事が多いのです。
もし蔦や枝が伸びてきた時、建物に侵入して床下の換気状態を悪くしたり、外壁の防水を食い破ってしまう可能性も考えられます。
中古住宅では既にそういった現象が発生している場合もありますので、ぜひ注意を払っておきたいところです。
プロでも分からないことはある!?
住宅のプロである私たちでも、普通に建物を見て回っただけではどうしても分からないこともあります。
たとえばこちらのような明らか目視で確認できるような指摘事項でしたら簡単に発見することができます。
しかし高所の場合、双眼鏡や2階からの調査だけではどうしても見えない場所も存在します。
そういった場所は高所カメラを用いた調査を行うことで不具合の有無を確認できます。
ただし特殊な機材を用いた調査は別料金になっている場合が多いため、料金プランは事前にしっかり確認しておきましょう。
室内でも目につきにくい場所は多い
中古住宅は新築住宅に比べて設備の不具合が起きるケースが多いので、事前の確認が大切です。
ちなみに設備調査はホームインスペクションでの必須項目では無いことから、オプション調査としているインスペクション業者も見受けられます。
「やってくれると思っていたら調査の対象外だった」とならないよう、事前に調査内容はしっかり確認しましょう。
(そもそも住み始めて使えないと困る箇所はオプションなどにせず標準の点検にするべきだと私は思います!)
その傾きは本当に不具合?
中古住宅ではさまざまな原因で建物に傾きが発生します。
たまに調査前にお客様から「自分で測ってみたら傾いているようなんだけど大丈夫なの?」とご相談をいただくこともあります。
しかし実際はちょっとした建具の調整や床の表面だけを張替えてしまえば問題ないというケースが多いです。
階段前や重い家具が置いていた床は凹みがちですし、しばらく開けていなかった窓や扉が動かなくなってしまうこともあります。
傾きの原因が「不同沈下」などの構造的欠陥であるかを判断するには建物全体を調査する必要があります。
1ヶ所で傾いていたからといって危険とは言えませんし、反対に1箇所だけが問題なさそうでも全体で見たら大きな不具合が発生している可能性もあります。
総合的な判断が重要です。
時間差で分かる配管の水漏れ
中古住宅の配管では、パッキンが劣化して水漏れを起こしている場合があります。
もちろんすぐに水漏れが起きていることが分かればいいのですが、流した直後は何もなくても時間差でじわじわと染み出してくる場合もあります。
少し確認して特に何も問題がなさそうでも実は不具合が発生している場合もあるので気をつけましょう。
見えない床下での配管の不具合
設備は目に見えない場所で不具合が発生している場合もあります。
たとえば排水だとシンク下だけでなく、そのさらに下の床下で水漏れが起きているかも知れません。
耐久性を落とすシロアリ被害
中古住宅の床下調査でよく見かけるのは「シロアリの被害」です。
シロアリが木材をエサに活動していることや湿気の籠もった環境を好むことから、人間の建物に被害を及ぼすことがあります。
シロアリが厄介なのは被害に気づきにくいことです。
根太や大引・土台といった見えない床下の木材が知らず知らずのうちに食べられているケースが中古住宅では非常に多いです。
構造部材のシロアリ被害は万が一の地震での倒壊リスクを大きく高めるので要注意です。
木材の腐朽
木材には、どれだけ水分を含んでいるかを表す「含水率」という指標があります。
通常、中古住宅の部材の含水率はおおよそ10~20%ほどが目安ですが、何かしらの問題で床下の湿度が高い状態だと、木材の含水率も基準を大きく上回ってしまう場合があります。
含水率の高い木材はカビ・腐朽・シロアリ被害が発生しやすくなるため、リスクの有無は事前に確かめておきたいところです。
床下への進入調査を実施すれば、含水率計と呼ばれる機材を用いて見た目だけでは判断できない木材の状態を確かめることができます。
雨漏りは超重要な指摘事項
ホームインスペクションで最も重要視するべき指摘事項(不具合)の1つが「雨水の浸入」です。
雨漏りは建物の寿命を大きく縮める原因であることから、築年数がそれなりに経過している中古住宅では特に気にするポイントと言えるでしょう。
小屋裏の調査は基本的には目視で行いますが、進入調査をすれば床下同様に含水率計を用いてより詳細に調べる事もできます。
放置すると”2次被害”で更なるダメージが
雨漏り自体も建物を劣化させる原因になりますが、同じく懸念されるのが”2次被害”です。
雨漏りを放置すると
- 木材の腐朽
- カビの発生
- 断熱材の劣化
- シロアリの誘因
- 天井の染み
といったさまざまな更なる被害の原因となります。
特に比較的新しい中古住宅では、小屋裏の断熱材が水を溜め込んで知らず知らずのうちに被害を進行させてしまう場合もあるので注意が必要です。
少なくとも購入時に小屋裏に異常がないか、しっかりと確かめておくことをおすすめします。
小屋裏にはこんなリスクも!?
中古住宅ではネズミやハクビシンといった害獣が小屋裏や天井裏に入り込んでいるケースがあります。
糞尿などが室内の天井に染みていれば気付けるかもしれませんが、厄介なのは先ほど同様に断熱材が敷かれていた場合です。
害獣は天井に敷かれている断熱材を布団代わりにしてその上に排泄している場合もあるため、小屋裏に進入してみないと気づけないこともあり注意が必要です。
さいごに
今回は中古住宅のホームインスペクションの重要性について、指摘事項の例も交えつつ色々な角度からご紹介してきました。
昨今は物価高騰の影響もあり中古住宅の需要が急速に高まっています。予想外のトラブルをなくし、安心して住み始めるためにも、是非ホームインスペクションの活用を検討してみてはいかがでしょうか?
ホームインスペクションについてはこちらのページでも詳しくご紹介していますのでチェックしてみてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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