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買いたての中古住宅で室内に虫が大量発生!?シロアリ被害を疑うべし

2022.10.31
鳥居

WRITER

鳥居 龍人

二級建築士 e-LOUPEインスペクター

建築事務所を経て株式会社テオリアハウスクリニックに入社。前職での現場監督経験から、施工から設計まで幅広い知識と経験を持つ。現在はその経験をもとに戸建て住宅のインスペクション業務に携わる。JSHI公認ホームインスペクター。既存住宅状況調査技術者。

今回は中古住宅で室内に虫が大量発生した時の対処法をご紹介します。

中古住宅に発生した虫の正体は?

もし5月頃に家の中で大量の羽のついた黒い虫を見かけた場合、疑うべきはシロアリの被害です。

中古住宅の場合、取引によってはシロアリ対策の有無についてうやむやにされており、住み始めてから家の中でシロアリが発生する・・・という可能性も十分考えられます。

もし建物内部でシロアリが発生した場合どうすればいいのか、具体的な対策方法をご紹介していきます。

「羽アリ」の発生は深刻なシロアリ被害のサイン

まず行うべきは大量発生した羽虫が「シロアリの羽アリ」である可能性を疑うことです。

室内に発生したシロアリの羽アリは「シロアリ」というイメージからはかなりかけ離れています。

というのも、シロアリの羽アリの体は白色ではなく、全身が黒色です。

そのせいで、発生した羽虫を「シロアリ」と認識せずに放置してしまった・・・・・・なんて話もあるぐらいです。

しかし、シロアリの羽アリを放置するのは非常に危険です。なぜなら羽アリは、既に建物に深刻なシロアリ被害が発生しているサインでもあるからです。

放置すればするほど被害は拡大し、建物はボロボロになっていきます。

実は私自身も、建物の知識が全く無かった学生の頃、実家で発生したシロアリを放置していた経験がありました。

羽アリ自体は出てきた時に除去してしまえばいずれ出てこなくなります。発見した羽アリを掃除機で吸い、そのまま放置していたのですが・・・

ドア枠が表面だけを綺麗に残して中身が全くないスカスカの空洞になってしまっていました。

せっかく買ったお家がボロボロになってしまっては元も子もありません。まずはシロアリかどうかを必ず調べるようにしましょう。

発生した時期と蟻の特徴で見分ける


では具体的にどのようにシロアリかどうかを見分ければいいかというと、「発生した時期」と「体の特徴」です。

日本でシロアリの羽アリが発生するのは4月後半から5月にかけて、雨の降った翌日の晴れた日であるケースがとても多いです。

逆に言えばそれ以外の時期であれば他の虫である可能性が高いといえるでしょう。

体の特徴としては、全身が黒色でくすんだ色の羽がついています。分かりやすいポイントとしては、触角が数珠のような形をしていることや首回りだけ黄色いリング状のような模様がついていることです。

これらの特徴が当てはまるようでしたらそれはシロアリだと判断できます。

とはいえ、元々羽アリはとても小さいですし、「虫が苦手・・・」という方には体の特徴を調べるのは難しいかもしれません。

そんな時は「発生現場に羽が残されているか」を調べましょう。

シロアリの羽アリは発生後、羽を自ら切り落とします。そのため、羽アリの発生場所には羽だけが残されているケースが非常に多いのです。

もし、玄関や洗面所などに大量の羽がバラバラと落ちているようであればシロアリの可能性大です。

速やかに専門の業者に相談し、次の対策を打つようにしましょう。

中古住宅でシロアリ発生の際の売主とのやり取り

さて、ここで気になるのは「売り主から何かしらの対応をしてくれるのか」だと思います。

私たちの立場からは「どのような契約をしたかによって変わってくる」としか言えません。

例えば、契約には「もし建物でこのような不具合が起きた場合には契約に反する不具合とみなし責任を取る」といった約束がされている場合があります。(契約不適合責任といいます)

「契約不適合責任」が適用される期間内であれば、シロアリの被害も損害賠償等で修繕が可能な場合もあります。

しかし反対に、「もし万が一何かしらの不具合が起きていたとしても売主側では一切責任を負わない」といった契約になっている場合は自己責任で対応する必要があります。

まずは契約内容を確認してみましょう。

ホームインスペクション実施済みでも油断は禁物

インスペクションの床下点検
現在、中古住宅を売買において不動産業者は必ず建物状況調査(ホームインスペクション)を告知することが義務化されています。

ホームインスペクションは建物の劣化や不具合の状況を有資格者が調べて依頼者へ報告するサービスで、利用者は年々増えてきています。

そのため、「ホームインスペクションで特に何も問題がないと言われた」と住宅の購入に踏み切るケースも多いかと思われます。

しかし、シロアリに関する報告では気を付けておきたいことがあります。

それは「調査範囲」です。

国が決めた調査基準である「インスペクションガイドライン」では床下の調査は必ずしも進入して行うこととはされていません。

そのため、インスペクション業者のサービスの内容次第では床下の調査は点検口からの目視確認としている場合があります。その場合、たとえ報告書では「異常なし」でも、見えない場所にシロアリが存在し、被害を発生させている可能性も否めません。

やはり大事なのは「報告書では大丈夫と書いてあったから・・・」と何もしないのではなく、適切な処置を行うことです。

まとめ

今回は中古住宅のシロアリについて詳しくお話ししてきました。

やはり大切なのは「まず放置をしない」ということです。

羽アリ自体は放置してもやがて収まります。また、住宅の購入費用やその際の内装や水まわりのリフォーム費用が大きく、想定外の新たな修繕費を出すことが厳しいという話も珍しくありません。

これらの事から何も対策を打たず過ごす・・・というケースがあるようです。

しかし羽アリは全体のごく一部であり、シロアリは家の下でずっと活動を続けています。

まずは早期発見、そして適切な処置が安心して家に長く住むコツとなります。

春に羽蟻を見かけた際にはすぐに排除してしまうのではなく、まずは注意深く確認されることをおすすめいたします。

 

「見えないところへの徹底した追求」がe-LOUPEの基本方針です。