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木造住宅の寿命は短いという誤解

2020.08.17
岩井

WRITER

岩井 数行

二級建築士 e-LOUPEインスペクター

建築事務所を経て2010年に株式会社テオリアハウスクリニック入社。床下調査や断熱事業での現場経験を活かし、現在は戸建て住宅インスペクション事業に携わる。JSHI公認ホームインスペクター。既存住宅状況調査技術者。蟻害・腐朽検査士。

「木造住宅の寿命って30年しかないの?あまり長持ちしないってこと?」
このページを見られた方はもしかするとそのような疑問を感じておられるかもしれません。

結論からいうとその考え方は誤解です。本来木造住宅の寿命は6,70年を超えると言われています。

実際に築100年を超えるような古民家が日本の各地に存在します。また、スケールが違うかもしれませんが奈良の法隆寺は日本最古の木造建築物で築年数は1000年を超えていますよね。

このページでは昨今の「木造住宅の寿命が30年」という考え方はいつ頃から定説として扱われるようになったのか、またそれがなぜ誤解であると言えるのか、具体的に紹介していきます。

そもそも木造住宅の寿命は30年の根拠は何なのか

ではまず「木造住宅の寿命が30年」と言われる根拠が何なのか紹介していきましょう。

1つ目は国土交通省により作成された「建設白書」で、この中の「成熟社会に相応しい住宅ストックの活用」という項目です。

ここでは具体的に、日本の住宅の平均寿命が26年、アメリカが約44年、イギリスが約75年であり日本の住宅サイクルが非常に短いことが書かれています。

日本の住宅の約8割は木造であるといわれており、ここでいう日本の住宅とは実質的に木造住宅の事を表すといっていいでしょう。

2つ目は国税庁が定める耐用年数です。国税庁は木造住宅の法定耐用年数を「22年」と定めており、木造住宅を新築から22年後には経済的な価値が0になるものとして扱っています。

「国の調査でも平均寿命が26年という統計結果がでていて、法律でも耐用年数が22年となっている。やはり木造住宅は長持ちしないではないか」

そう思われるかもしれませんが、まだ結論を急ぐべきではありません。
ここからは本題である「木造住宅の寿命は30年」という考え方が誤解であるという根拠について説明していきます。

反論①木造住宅の寿命の情報ソースが古い

まず気にしていただきたいのが、この建設白書がいつ作成されたものかということです。
・・・それは平成8年です。

実はこの建設白書はもう20年以上前の報告書なのです。情報としても古くなってしまっている部分があります

この建設白書では日本の住宅の平均寿命が欧米に比べて劣る理由について「戦後の急速な住宅の需要に間に合わせることなどが原因で質の低い住宅を量産して大量建設・大量廃棄の構造を作り出してしまったことが原因である」としています。

確かに一昔前は元々質が低く30年も持たない住宅が建てられていたのかもしれません。しかし技術の進歩で住宅の標準的な性能も大きく上がりました。例えばシロアリ対策という観点だけでも、昔の住宅では標準的だった在来浴室は比較的リスクの小さいユニットバスになり、土壌だった床下は土間コンやベタ基礎が標準的になりました。

あくまでも昔の住宅のクオリティを想定しているという前提条件を頭に入れておいたほうがいいと思います。

反論②必ずしも「寿命を迎えた木造住宅=住めなくなった木造住宅」ではない


また、「住宅の寿命」について具体的にどのような住宅のことを「寿命を迎えた住宅」としているかご存じでしょうか。この白書では「取り壊した住宅」としています。つまり、性能面では十分住み続ける事ができる住宅であったにもかかわらず、何かしらの事情で取り壊してしまった住宅も多く含まれると考えられ、必ずしも「ボロボロになって住めなくなった住宅」という訳ではなかったのではないかと思います。

とはいえ、いくら丈夫な住宅でも住み手が「こんな家では住めない」と思うような要素があれば結局取り壊しをせざるを得ません。ライフスタイルにそぐわないためリフォームを検討したが予想以上に費用がかさむため、それならばと新築を購入するケースは少なくなかったのではないかと思います。

これについては先ほどの経済白書でも触れられており、今後は耐久性が高いだけでなく間取りや設備などのリフォームが簡単に行え、ライフステージ沿って形を変えていける住宅を造っていくことが大切だとしています。今後はこの視点はますます重要になっていくのではないかと思います。

反論③耐用年数=木造住宅の寿命ではない

では国税庁が定めている木造住宅の22年という法定耐用年数についてはどうでしょうか。

これはあくまでも「解釈の視点の違い」です。「法定」とある通り、ここでの22年とは住宅を消費財、法律的な視点でとらえた時の耐用年数です。冒頭でも述べましたが実際には築年数が30年を大きく上回る住宅が沢山存在することからも、それを超えると使い物にならなくなってしまうという訳ではありません。

余談ですが構造躯体や構成材に視点を当て、それらの物理的な耐用年数を考えたものを「物理的耐用年数」と呼ばれてます。

反論④木造住宅の寿命は住み方によって変わる

そもそも住宅が長持ちするかどうかはメンテナンスを定期的に行うかどうかにより大きく変わってきます。どんなに元々の性能が良くても適切なタイミングでメンテナンスを行わないでいると建物の寿命を大きく縮めてしまうことになります。

確かに温暖湿潤な気候である日本は欧米に比べ湿度が高く住宅の維持が難しい地域です。しかし冒頭でも紹介しましたが日本には古くからの建築物が多く存在します。住み手の努力で住宅を長持ちさせることは可能なのです。

最後に

ここまでのご説明で「木造住宅の寿命は30年」という考え方が誤解であるということはわかっていただけたのではないかと思います。

とはいえ、「永く住んでもらえるように」という考えを持たずに大量生産・大量廃棄の設計思想で建てられた住宅も未だに存在するので見極めには注意が必要です。

もし「今購入を検討している住宅が本当に安心して住み続けることができる住宅なのか」不安に思われている方は是非ホームインスペクションを実施して、いただくことをおすすめします。

 

「見えないところへの徹底した追求」がe-LOUPEの基本方針です。