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「建売住宅にもホームインスペクションは必要ですか?」

2025.06.03
岩井

WRITER

岩井 数行

二級建築士 e-LOUPEインスペクター

建築事務所を経て2010年に株式会社テオリアハウスクリニック入社。床下調査や断熱事業での現場経験を活かし、現在は戸建て住宅インスペクション事業に携わる。JSHI公認ホームインスペクター。既存住宅状況調査技術者。蟻害・腐朽検査士。

「建売住宅にホームインスペクションは必要無いと不動産屋さんに言われた」
「新築だから大丈夫って本当?」

このようなご相談をよくいただきます。

たしかに新築という言葉には安心感がありますが、本当にそれだけで十分なのでしょうか。
今回は、なぜそのような意見があるのか、そして建売住宅にホームインスペクションは本当に不要なのかについて、専門家の視点から解説します。

ホームインスペクションとは

ホームインスペクションとは、住宅に詳しい専門家が第三者の立場から建物の状態を調査し、不具合や劣化の有無を確認するサービスです。調査を行うのはホームインスペクターと呼ばれる専門資格を持つ人や、建築士の資格を持った人であることが多く、知識と経験に基づいて調査が行われます。

この調査は、新築住宅の購入時はもちろん、中古住宅の売買や、自宅の定期点検としても利用されています。


ホームインスペクションには、厳密に定められた規定はありませんが、国土交通省が示している「既存住宅状況調査方法基準」を元にして行う事が基本となります。
主な調査内容は、外壁や屋根の劣化、雨漏りのリスク、床や壁の傾きなど構造上の不具合の確認です。調査方法は業者ごとに異なる場合があり、高所カメラで屋根の様子を確認したり、床下や小屋裏に実際に入って調べるといった本格的なチェックを行う業者もいます。

こうした調査を建物の構造や施工方法に詳しい専門家が行うことで、建物の現状を正確に把握することができます。

建売住宅でホームインスペクションが必要な理由やメリット

「新築なら安心」「完成済みの建売住宅に検査は不要では?」と思われる方も多いかもしれません。
たしかに新築住宅は外観も内装も整っており、不具合が少ない印象を持たれがちです。しかし実際には、新築住宅であっても施工ミスや不具合が発生しているケースも珍しくありません。

特に建売住宅は、建築途中の様子を確認できないまま購入に至ることが多く、買主自身が建物の構造や仕上がりの状態を把握するのは難しいという特徴があります。

ホームインスペクションの最大の利点は、買主が住宅の状態を客観的に知ることができる点です。
ここからは、建売住宅においてホームインスペクションを取り入れる意義とその具体的なメリットについてご紹介します。

施工ミスや見逃された不具合の確認ができる

新築住宅でも、見た目がきれいだからといってすべてが完璧とは限りません。

施工店においては、施工段階から確認をしているはずですし、中間検査も実施しています。しかし、これらのチェックの内容や基準では、見逃されてしまう不具合があり、建物の状態を正確に把握するには不十分な部分があるのも事実です。

たとえば、断熱材が設計通りに入っていても、わずかな隙間があれば本来の断熱性能は発揮されません。こうした一見わかりづらい部分や見落とされやすい細部まで確認できるのが、ホームインスペクションの大きな役割です。

中立的な第三者が調査することで、検査で見落とされた不具合を発見し、より良い状態への改善提案ができるのも、大きなメリットですね。

見えない場所の確認ができる

建物の外周や室内に関しては施工途中においても多くの人の目に触れるため、何か不具合があっても事前に修繕される事が多いです。しかし、床下や屋根裏のような、見えない場所には不具合が残ることがあります

これらの場所には断熱材や配管、構造部材があり、ゴミや建築資材が置きっぱなしになっている事もしばしばあります。インスペクションではそういった部分もくまなく確認し、施工不良がないかをチェックします。

(写真)床下の不具合。断熱材が落下しており、大幅な隙間が生じている。

(写真)屋根裏の不具合。照明機材の上に断熱材が置かれ、隙間ができている。

トラブルを予防できる

新築住宅は見た目がきれいなため、買主・売主ともに安心しがちです。その結果、不具合が見落とされたまま引き渡しを迎えてしまい、後で発覚してトラブルになるケースがあります。

事前にインスペクションを行うことで、引渡し前に修繕交渉が可能になるため、安心して新生活を始められます。

資産価値が保全される

インスペクションを実施すると、調査結果は報告書として残ります。この報告書は、後の修繕記録と合わせて、「適切に管理された住宅」であることの証拠になります。将来的に売却する際にも好印象を与え、評価が上がる可能性があります。

また、新築時の調査報告書があることで、将来的な点検時に経年変化か初期不良かを判断しやすくなります。たとえば屋根裏にシミが見つかった場合でも、新築時に確認されていれば問題なしと判断できますが、後から発見されると雨漏りの可能性を疑われ、余計な調査や費用が発生する恐れもあります。

(写真)新築時にホームインスペクションを実施することで報告書を作成できる。

(写真)もし住宅を売却する際、新築時の状態が詳細に記載された報告書があることで有利になることがある。

「ホームインスペクションは不要」という意見とその真偽

新築建売住宅において「ホームインスペクションは不要」という意見には、実にさまざまなものがあります。建築業界の関係者や購入経験者など、立場によって見解が異なるため、それぞれの主張にも一理ある場合が少なくありません。
しかし、私たちのように日常的にインスペクションを行っている立場から見ると、中には誤解や不正確な認識に基づいた意見も多く見受けられます。

ここではよく挙げられる代表的なご意見と、それに対する実際のところを、わかりやすく解説いたします。

「新築だから問題ない」「不具合を見たことがない」

新築住宅は見た目がきれいで、大きな不具合が起きることは少ないため、「問題はないはず」と考える方も少なくありません。
また、多くの不動産仲介業者は中古物件も扱っており、築年数の経過による劣化や不具合を頻繁に目にしているため、相対的に新築はトラブルが少ないという印象を持ちやすいのも事実です。


しかし、仲介業者が不具合を目にしないのは、軽微な問題が売買に影響しないまま取引が完了しているからにすぎません。

見逃された細かい不具合が、引き渡し後にトラブルへと発展する可能性もあるため、購入者自身が建物の状況を正しく把握し、必要な確認を行うことが大切です。

「瑕疵担保責任があるから安心」

新築物件は築10年までの保証が法律で義務付けられています。その内容は「建物の構造耐力や雨水の浸入を防止する部分」となり、例えば明らかな床の傾斜や雨漏れなどがこれに該当します。これらの不具合が生じていた場合、売主は買主に対して補修・損害賠償等の責任を負うものとなります。

しかしこの保証はあくまでも不具合が生じた場合の保証をすることを約束している物であり、実際に不具合が生じていない事を保証するものではありません。そのため、不具合が生じる前に点検することが重要です。

またこの保証はあくまでも「建物の構造耐力や雨水の浸入を防止する部分」だけなので、内装や建具、設備、断熱材の施工に関しての保証ではない点にも注意が必要です。

「第三者の検査済みだから大丈夫」

新築住宅では、建築基準法に基づいた中間検査などの第三者による検査が行われることがあります。
これらの検査は、法令で定められた項目に従って実施され、建物が一定の基準を満たしているかを確認するという、重要な役割を担っています。

ただし、こうした検査は主に構造部分や法的な基準に関わる項目に限られており、住宅全体の施工品質や細部の仕上がりまでを網羅的にチェックするものではありません。

そこで、より広い範囲を細かく確認したい場合には、ホームインスペクションの活用が有効な選択肢となります。

「費用がかかるからもったいない」

ホームインスペクションの費用は、新築住宅の場合でおおよそ5〜10万円程度が一般的です。
確かに安いとは言えない金額ですが、住宅の購入価格全体から見ればごく一部に過ぎません。

また、もし大きな不具合を見逃してしまった場合、その後の修繕費用はインスペクション費用をはるかに上回る可能性があります。軽微な不具合でも、有償で修繕を依頼すれば作業員の人件費などを含めて同程度の費用が発生することも十分あり得ます。


何より、新築時は建物の状態を確認できる数少ない機会です。
一度このタイミングを逃すと、あとから全体をチェックすることは難しくなるため、金額だけで判断するのではなく、「将来の安心」として検討するのがよいでしょう。

「有名施工店だから大丈夫」

「有名な施工会社が建てた家だから安心」と思われがちですが、実際にはどの施工会社であっても不具合がまったくないとは言い切れません。多くの新築住宅を調査してきた立場から見ても、メーカーごとの差は意外と少なく、どの会社でも良い物件・悪い物件の両方が存在しています。

現代の住宅施工は分業制が基本で、基礎工事、構造、内装などはそれぞれ異なる専門業者が担当します。そのため、全体の品質は現場での管理体制、特に現場監督の管理力に大きく左右されます。

現場監督が多忙で複数現場を掛け持ち、確認が不十分になると、たとえ大手であっても施工ミスが見逃されることもあります。
つまり、施工店の名前だけでは、実際の施工状況や管理体制を把握することができないため、特定の会社であれば安心という考え方は必ずしも正しいわけではないということです。

建売住宅のホームインスペクションの内容

実施のタイミングについて

建売住宅でホームインスペクションを行うタイミングにはいくつかの選択肢があります。

理想的なのは「契約前」


理想的な実施タイミングとしては、「購入契約前」が挙げられます。この時点で住宅の状態を把握できれば、購入するかどうかの判断材料になるからです。

ただ実際には契約前にインスペクションを行うことは少なく、現実的には難しい場面もあります。その理由には、建売住宅は「まだ誰の所有物でもない状態」で販売されているという事情があるからです。
購入希望者がインスペクションを依頼しても、調査の結果を待つ間に別の人が先に契約してしまうケースも少なくありません。

こうした事情から、売主や仲介業者が契約前のインスペクションに消極的な場合もありますが、これは検査自体を否定しているわけではなく、販売の流れによる制約といえます。
 

一般的なのは「契約後〜内覧会」


現在、最も一般的な実施タイミングは「購入契約後〜引渡し前の内覧会(施主検査)」です。この時点であれば、他の購入希望者に物件を取られる心配はなく、検査結果に基づいて引渡し前までに必要な修繕を依頼できます

万が一購入を諦めざるを得ない場合でも、多少費用や手間はかかりますが、購入キャンセルといった対応も可能です。

インスペクションで確認する主なポイント

ホームインスペクションの調査内容の基本は、建物の安全性や劣化のリスクに関わる部分を第三者の視点で確認することです。特に以下の項目が重視されます。

  • 建物の構造耐力や雨水の浸入を防止する部分
    → 建物の不同沈下(床や壁の傾き)や外壁等の隙間といった箇所の確認する、インスペクションでも必須の基本項目です。
  • 内装の汚れや不具合
    → 買主自身でも確認できますが、慣れていないと見落としがちなため、インスペクターが補足的に対応することもあります。
  • 設備機器の状況(主に給排水設備・電気設備)
    → 水漏れがないか、換気が出来ているか等確認します。ガス設備は開栓前で確認できないことが一般的です。
  • 普段見えない箇所の確認(床下・屋根裏)
    → 構造駆体や断熱材、配管・配線の状態などを確認します。

費用と所要時間の目安

インスペクションにかかる費用や時間は物件の規模や調査内容によって異なりますが、一般的な建売住宅の場合の目安は以下のとおりです。

費用 5~10万円程度
所要時間 2~4時間(住宅の規模、調査内容によって異なる)

 
詳細な調査を依頼する場合や、特別な機材を使用する場合には、追加料金が発生することもあります。依頼時には調査範囲や内容、報告書の形式などについて、事前にしっかり確認しておくと安心です。

ホームインスペクションを依頼する際のポイント

ホームインスペクションを依頼する際には、調査の質や信頼性に関わるいくつかの重要な確認項目があります。
ここでは、依頼前に押さえておきたいポイントを解説します。

保有資格を確認する

中古住宅のインスペクションは「既存住宅状況調査」として法律で基準が定められており、調査を行うには建築士であり、かつ所定の講習を修了していることが必要です。

一方で、新築住宅の場合には法律上の調査基準や資格要件は定められていません。そのため、理論上は誰でも調査を行うことが可能ですが、実際には建築や住宅に関する十分な知識と経験が不可欠です。

そのため、信頼できるインスペクターを選ぶ際には、どのような資格を保有しているかが重要な判断材料のひとつになります。以下に、ホームインスペクションの依頼先として確認しておきたい主な資格をまとめました。
依頼前には、これらの資格の有無や内容をしっかり確認しておくことをおすすめします。

  • ホームインスペクター(民間資格)
    民間団体が実施している講習や試験をもとに発行される資格で、ホームインスペクションに特化した知識を持つことの証明となります。
  • 建築士(国家資格)
    建物全般に関する知識や設計・施工経験が求められる国家資格であり、一般的に高い専門性を備えているとされます。

より専門的な知識が欲しい場合…

その他の専門資格をもっているか確認してみましょう。
白蟻や断熱性能、電気設備など、専門資格を有しているインスペクターもいます。調査してほしいポイントに応じて、専門資格の有無を確認することが望ましいでしょう。

調査内容と方法を確認する

実際にどのような調査が行われるのかを事前に確認しておくことも大切です。

繰り返しになりますが、インスペクションでは「建物の構造耐力」や「雨水の浸入を防止する部分」の確認が基本とされており、外壁の調査や建物の傾きを測定する傾斜測定などは、多くの場合標準的な調査項目として含まれます。

一方で、屋根・屋根裏・床下など、調査に特別な機材や準備が必要な部分については、インスペクターによって対応方法が異なります。
たとえば床下調査の場合、点検口からの目視だけで済ませるケースもあれば、実際に床下に入り込んで詳細に確認するケースもあります。進入調査には追加費用がかかる場合もあるため、事前に確認しましょう。

どこまでが調査範囲になっているのか調査方法がどうなっているのか、そしてその結果をどのように報告してもらえるのかをしっかりと確認しましょう。

まとめ

ここまで、新築建売住宅におけるホームインスペクションの必要性についてご説明してきました。

新築住宅であっても、すべてが完璧とは限らず、施工中に見落とされる可能性のある不備や仕上がりのばらつきは、どの施工会社においても起こり得ます。

たしかにインスペクションには一定の費用もかかってしまいますが、住宅の購入価格全体から見ればごくわずかです。万が一不具合があった場合の修繕コストや手間を考慮すると、十分に検討に値する出費と言えるでしょう。

何より、ホームインスペクションの目的は「不具合を探すこと」ではなく、建物の状態を正しく把握し、安心して新生活を始めるための準備をすることにあります。

建物の完成時は、状態を確認できる数少ない機会です。少しでも不安がある場合は、ホームインスペクションの実施を前向きに検討することをおすすめします。

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