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ホームインスペクションのタイミングを住宅購入の流れで解説!

2022.11.26
岩井

WRITER

岩井 数行

二級建築士 e-LOUPEインスペクター

建築事務所を経て2010年に株式会社テオリアハウスクリニック入社。床下調査や断熱事業での現場経験を活かし、現在は戸建て住宅インスペクション事業に携わる。JSHI公認ホームインスペクター。既存住宅状況調査技術者。蟻害・腐朽検査士。

「ホームインスペクションを利用するのはどのタイミングが良いんですか?」「このタイミングではもう手遅れですか?」

といったご相談をいただく事がよくあります。

そこで今回は新築物件や中古物件を購入する際に実施するホームインスペクションの「タイミング」についてお話ししていきたいと思います。

(※ご自宅や注文住宅のホームインスペクションを検討されている場合はまた別の考えとなりますので、今回の内容が当てはまらない事もあります。)

引き渡しまでの流れ


まずは引渡しまでの流れを改めて整理してみましょう。

すでに完成されている建物であれば、

物件見学→申し込み→契約→(内覧会)→引渡し→入居

という流れになります。

つまり、ホームインスペクションを利用するとしたら、

  • 申し込み前
  • 申し込み後、契約前
  • 契約後、引き渡し前
  • 引き渡し後

のいずれかのタイミングということになります。

それぞれの場合で行うホームインスペクションについて詳しく解説していきますね。

ホームインスペクションのタイミング一覧

申込み前

まず申込み前のホームインスペクションですが、適切なタイミングとは言えません。

確かに申し込み前であれば面倒な手続きも行っていませんし、何か問題が発覚した際も別の物件に切り替えられることから安全ではあります。

しかし、そもそも申し込みすらしていない人間の申し出を売主が了承してくれるかは怪しいところですし、仮にホームインスペクションできたとしても依頼主はその家に対して何の権利も持ち合わせていません。

そのことから、もし他の購入希望者が現れた際は売り主がそちら側と話を進めてしまう恐れがあります。

特に条件のいい家であれば「問題はなさそうだし買おうかな?」と思ったときには既に他の方に購入されてしまっていた・・・となってしまう可能性が大きいです。

申し込み前のインスペクションは現実的ではないと言えるでしょう。

申し込み後、契約前

ホームインスペクションのベストタイミング!

続いて「申し込み後、契約前」ですが、特に中古物件購入の際はこの時期がホームインスペクションのベストなタイミングと言えます。

このタイミングであれば他の購入希望者に先を越されてしまう心配はほぼありません。

もし万が一大きな瑕疵(簡単には直せないような重大な問題)が見つかったとしても契約が成立していませんので購入を中止する選択肢も残されています。

「申し込みの時にお金を払わないといけないんじゃないの?」と思うかも知れませんが、購入を中止する場合は申し込み金を返還してもらう事ができます。

まだ物件を探されている最中だったり、契約をされていない段階であれば可能な限り契約前のインスペクションをおすすめいたします。

ただし、前提としてインスペクションは売主にとって「義務」ではないため、やはり売主側から断られるというケースも0ではない点にはご注意ください。

中古物件の落とし穴

もう一つ注意が必要なのが、購入を検討しているのが中古物件の場合はまだ売主が住まれているかも知れないことです。

ホームインスペクションは基本現状での調査となる為、家具等が多いと目視できる範囲が狭くなったり、点検口が開けられなかったという事もあります。

買主に協力してもらう事になりますが、大型家具等は移動は難しい場合もあります。

又、売主が立ち会える(在宅)してるタイミングでないと難しい為、スケジュールの調整がつかないといったケースもあります。

もしホームインスペクションを実施しようとした時点で売主が居住中であった場合、これらのリスクは頭に入れておくことをおすすめします。

契約後、引き渡し前

内覧会での実施はメリットが多い

新築住宅において最も多くホームインスペクションのご相談をいただくのが、契約後・引き渡し前のタイミングです。

新築では契約後、引き渡し前に「内覧会」というものが一般的に設けられています。

内覧会は売主や施工店から買主が建物や設備の説明を受けたり、契約通りに建てられたのか、施工不良や不具合などがないかを確認するための場です。

新築のホームインスペクションを内覧会で実施すれば、

  • 購入キャンセルに繋がるような不備はほぼ存在しない
  • 建物が既に出来上がっているので一通り確認できる
  • 売主買主の関係者が揃うので結果の説明や対応がスムーズ
  • 引き渡し前までに指摘箇所を修繕する時間が取りやすい

などのメリットがあります。

デメリットとしては、関係者が多くなることや引き渡し日までの時間も決まっていることから日程調整がシビアである点です。

万が一日程調整が難航した場合には、内覧会とホームインスペクションとを別日に実施する事もありますのでその可能性も視野に入れておく必要があります。

引き渡し後

まだ遅くはない!?

引渡し後のホームインスペクションは、ベストタイミングである「申し込み後、契約前」からかなり経過してしまったと思うかも知れません。

しかしホームインスペクションを実施するには手遅れかというと、そうとも言い切れません。引き渡し後であってホームインスペクションを有効活用できるタイミングが存在します。

代表例が「引き渡し後・引越し前」です。

新築であっても、売主買主それぞれの理由で契約から引き渡しまでの時間が少なく、インスペクションを実施できなかったという事例もあります。

その様な場合でも引き渡し直後にインスペクションを実施する事は有効となります。

引き渡されたからこそできることも

中古物件の場合、前の入居者≒売主が住まわれている場合、

  • 家具等で調査範囲が限定される
  • 売主や仲介の立ち合いなどで日程調整が難しい
  • そもそも売主が協力的でない

といった理由でホームインスペクションを思うように実施できないケースがあります。

一方引き渡し後であれば自分たちだけでスケジュールの調整ができますし、引越し前の家具が無い状態であれば隅々まで調査が可能です。

また引き渡し前が空き家の物件ですと、電気水道ガスといったインフラが絡む調査を実施できない場合もあり、引き渡し後にはそれらが確実に可能になるというメリットもあります。

新築中古それぞれどの様な法律を元にどのような契約になっているのか事前に確認しておく事が重要です。

引き渡し後でも不具合は直してくれる?

引き渡し後は売主は住宅の不具合について一切責任を負わなくなるのかというと、そういうわけではありません。

日本の新築住宅は品確法「住宅の品質確保の促進等に関する法律」によって10年間「構造耐力上主要な部分」「雨水の侵入を防止する部分」が保証対象となっています。

短期保証でもだいたい2年間は各社で設備や建具、内外装について保証が設けられている事が多いです。

これらの保証になっていなくとも、引き渡し直後に確認できた、床下や小屋裏での断熱材の欠損といった明らかに施工時の原因と思われる不備は施工店側でも、しっかりとした修繕をしてもらえる可能性が高いです。

このことからも、引き渡し後にホームインスペクションを実施する価値は十分あると言えるでしょう。

中古住宅は保証が短く注意が必要

2020年4月1日以降中古住宅では「契約不適合責任」というものが設けられています。

これにより、契約書の内容に適合しない場合であれば追完請求(修理を請求できる)、代金減額請求、契約解除、損害賠償請求といった権利を請求できます。

その為、床下や小屋裏といった隠れた箇所だけでなく目に見える箇所での不具合も、契約内容に合致していない場合は上記の権利を請求できることになります。

とは言え、中古住宅の場合その保証期間はそれほど長くないことが一般的です。

売主が個人の場合は免責として3ヶ月程度にしている場合が多く、宅建業者(不動産業者)の場合は最短でも2年間となります。

特に壊れやすい設備の部分は保証が無かったり「7日間」となっている事が一般的です。

基本的にあまりゆとりがないことが多いので、保証期間内にホームインスペクションを実施する場合は急いだ方がいいでしょう。                

また、まだ住宅購入を検討中の方は契約時に期間を確認しておく事をおすすめします。         

保証期間の終了後

では保証期間も過ぎてしまった場合にはホームインスペクションを実施する意義は無いのかというと、それは「ノー」です。

表面上は綺麗な建物でも、見えない箇所では問題が放置されていることも珍しくはありません。

住んでいてもし何か問題や異変に気づいた時はプロの目による調査を早い段階で行うことがおすすめです。

例えばシロアリの被害が起きてしまっていれば日が経つほどに状況は悪化します。

構造部のダメージは耐震性に直結しますし、簡単に直せるものでもありません。

やはり早期発見が大事ということですね。

中古物件のタイミングが難しい理由


一般的に中古物件の方がホームインスペクションのタイミングはシビアになりがちです。

中古物件では売買契約前に仲介業者からホームインスペクション(建物状況調査)を実施するかどうか・業者を斡旋するかどうかの説明があり、その後契約時の重要事項説明の中でホームインスペクションの調査結果について説明を受ける、という流れとなっています。

重要事項説明から売買契約までの期間は短い傾向にあり、説明が終わったら直ぐ契約・・・という事もあります。

その為、ホームインスペクションの存在を知ってから契約までの時間は短く、その分タイミングも限られがちなのです。

そういった背景から、中古住宅でホームインスペクションを実施しようとすると自然と、契約後・引き渡し前〜引き渡し後・引越し前のタイミングになってきます。

契約後・引き渡し前のタイミングであれば、もし仮にシロアリ被害や雨漏れといった大きな不具合を確認した場合、それに対する対応は行ってもらう事は可能です。

ただし、契約解除や減額といった話は難しい場合がありますので注意しましょう。

何はともあれ、引き渡し前にホームインスペクションで建物の状況をしっかり把握しておく事は買主と売主の双方にメリットがあるといえます。

可能な限り引渡し前にホームインスペクションを実施しておきたいところですね。

さいごに

今回はホームインスペクションを入れるタイミングについて解説していきました。

どの段階で入れるかによってそのメリットも異なりますが、スケジュールや売主様の事情、都合などもあり必ずしも希望のタイミングに入れられるかというと難しい場合もあります。

特に気にいった物件に対しては他の方も狙っている・・ということで契約前に入れる余裕もなかったりすることも見受けられます。

とはいえ、状況を確認しないで住みつづけるにはリスクもありますのでタイミングをみてインスペクションの導入を検討されることをおすすめいたします。

ホームインスペクションについてはこちらの記事で解説していますので詳しく知りたい方はぜひ読んでみてください。

 

「見えないところへの徹底した追求」がe-LOUPEの基本方針です。