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もう建て替えた方がいい?判断のコツをホームインスペクターが解説!

2023.03.13
岩井

WRITER

岩井 数行

二級建築士 e-LOUPEインスペクター

建築事務所を経て2010年に株式会社テオリアハウスクリニック入社。床下調査や断熱事業での現場経験を活かし、現在は戸建て住宅インスペクション事業に携わる。JSHI公認ホームインスペクター。既存住宅状況調査技術者。蟻害・腐朽検査士。

こんにちは。e-LOUPEの岩井です。

今回は「建て替えかリフォームか」というテーマでお話をしていきます。

建物の老朽化やライフスタイル・家族構成の変化などに伴って現在の居住環境を一新する必要が出てくることもあると思います。

そこでよく問題になるのが「リフォームと建て替え、どちらを選ぶべきか?」です。

実はこの判断は簡単なようで意外と難しいケースもあり、しかも選択を誤ると本来必要のなかった出費をすることになったり費用に見合ったリターンを得られなくなってしまうことになりかねません。

適切な判断には何に注目すべきなのか、ホームインスペクターの視点から実際の建物の調査事例を交えつつ詳しく解説していきます。

建て替えかリフォームか、判断のポイント

予算


そもそもの予算で選択肢は大きく変わります。

基本的には建て替えの方が既存住宅の解体や廃材処分、新たな建物の建設、工事中の仮住まい、などによってリフォームより高くなりがちです。

ただしリフォームであってもスケルトンリフォームのような大規模となると大きな金額がかかる場合があります。特に最近はアスベスト対策などの影響で住みながらの工事にかかる費用や期間も延びている傾向にあります。

またリフォーム特有のリスクとして「想定外の工事」があります。

工事を進める中で白蟻被害や雨漏れといった損傷が後から発覚し、追加工事で費用がかかる・・・といったことがあります。

このようなリスクを避けるためには、事前に建物の状況をしっかり確認しておくことが望ましいです。

ローンや補助金

建て替えもリフォームも様々なローンや減税措置、自治体による補助金制度があり、どの様な制度があるのか知ることが重要です。事前にしっかりと確認しましょう。

また、使おうと思っていた補助金が依頼する施工店では対応していなかった・・・というケースもありますので、業者にも事前に確認しておきましょう。

これからの住まい方

住宅をどの様に使っていきたいのか、どれだけの間使っていきたいのかそれらも、判断する際の重要なファクターとなります。

家を継ぐ人がいる場合やこれから長く住む計画になっている場合、家族が増えたりする場合で間取りを大きく変えたい場合は、建て替えの方が良いかもしれません。

それほど長期に住む予定ではなく、将来的には更に別の家に住む計画であったり、将来さらにリフォーム(二世帯住宅等)を考えるのであれば、今は部分的なリフォームで良いのかもしれません。

これから住む人皆で考えるのがおすすめです。

望む建物の性能


住宅に今後どのような性能を求めるか、しっかりと考えましょう。

耐震性能や断熱性能、バリアフリー等も併せて間取りの変更は中古住宅のリフォーム工事でも改善は可能ですが、外せない壁や柱などやはり限度があります。

建て替えであれば最初から希望の間取りで現在の基準に合わせた耐震や断熱性能が実現できます。

大切なのは現状の住宅がどの様な性能であるかを把握することです。

例えば、床下や天井点検口から覗いてみると、床や天井断熱材が見える場合があります。それがどの程度入っているかでおおよその断熱性能を推測することができます。

耐震性能ならば2000年以降の建物であれば現行の基準をクリアしていると考えられますが、旧耐震基準となる1981年以前の建物だとリフォームで現行基準を満たすにはとても大きな工事が必要となる場合があります。

また、1981年から2000年までの住宅に関しては俗に「81-00住宅」と呼ばれており、新耐震基準で建てられた住宅ではありますが、現行の基準に達していない事も多く注意が必要です。

こういった現状を認識しておくことで、リフォームでいいのか建て替えるべきなのか適切に判断することができます。

周辺環境


周辺環境によっては当初の計画とは変更せざるを得ない場合もあるので注意が必要です。具体的に2つの例を挙げてみます

1つ目は建築基準法の基準を満たしていなかった場合です。

現在の建築基準法では、「建築物の敷地は、道路に2メートル以上接しなければならない。」となっていますが、何らかの事情で現在その基準に適合していない住宅もあります。

そのような建物は「再建築不可物件」と呼ばれており、建て替えの際は基準に適合させる必要があることから手間や費用がかかったり、今までよりも小さい規模での住宅でしか建てられなかったりする場合があります。

もう1つは地盤の改良が必要なケースです。

例えば丘陵地で盛り土をしているような場所や元の地盤が軟弱地盤である場合です。

そのような地盤に建っている建物の場合、不同沈下による建物の傾斜が既に進行していたり、今後そうなる可能性があります。

それに対応するために地盤改良を行う必要がありますが、その場合は部分的なリフォーム工事では難しく建て替えが望ましいでしょう。

判断にホームインスペクションを活用した事例


ここからはどの様な事例にて建て替えやリフォームに関して検討されているのか、実際にホームインスペクションを通して決められた事例をご紹介していきます。

長らく住んでいなかった住宅に移り住む

依頼者様は元々大きな敷地に二棟の住宅を所有し、その片方に住まれておられました。

もう片方の住宅はほとんど使っていなかったそうですが、息子夫婦が結婚したことから自分達はそちらに移り住む事を計画されたそうです。

そこで問題になったのがリフォームか建て替えか、です。

離れの建物は造りは立派であったものの、年数が建ちメンテナンスも不十分で不備が多く見られており、現状把握のためにホームインスペクションのご相談をいただきました。

調査の結果、やはり経年による劣化を複数箇所で確認しました。その結果を元に傷んでいた箇所の部分的な修繕や減築を行ってより使いやすい造りにしていく方向で話をまとめることができました。

親御さんと一緒に暮らし始める

依頼者様は親御さんが高齢であることもあり、親御さんの家で一緒に暮らすことを決められたそうです。

ただその家は築年数も古く、過去に外壁や屋根の塗装などのメンテナンスを怠りがちだったことからこのまま住めるかどうか不安に感じておられたそうです。

「いっそのこと建て替えをしたほうがいいのではないか?」と不安に思う中で現状を客観的に知るためにホームインスペクションのご依頼をいただきました。

しかしいざホームインスペクションを実施してみると、その家は建て替えずとも少しリフォームをすればまだまだ住めるということが分かりました。

例えば床が沈むことから「見えないところはボロボロなんじゃないか」と心配されていたようですが、実際に確認してみたところ経年でたわみが生じていただけであったことから、補強や床の張替えだけで充分に使うことができるとお伝えさせていただきました。
最終的には建て替えではなく、リフォームで住みやすくしていく方向で計画することに決められたようです。

500万程度でリフォームするつもりが・・・


そのご依頼者様は購入した中古住宅を500万円程の予算でリフォームされるご予定とのことでした。

元々外壁が劣化しているのが分かっていたことから、その修繕に加えて水まわりや内装を綺麗にしても予算内で収まるだろうと計画されているようでした。

しかしホームインスペクションを実施したところそれ以外にも見つかる数々の不具合。

まず耐震性能ですが、その物件は1980年頃に建てられており、基礎コンクリートには鉄筋が含まれておらず現在の基準を満たす性能が確保されているような状態ではありませんでした。

また、屋根は雨漏りしており柱にも腐朽が生じていました。

さらに浴室もタイル風呂であったことから、床下の土台は腐朽がかなり進行しておりシロアリ被害も発生していました。

それらを全て修繕するとなると、とてもではないですが予算には収まり切らない状況でした。結果をご報告したところ、リフォーム箇所を一度見直すとのことで落ち着いたようです。

リフォーム後に万が一何かが起きて、ローンだけ残ってしまうのは避けたいところです。

事前に建物がどういった状態なのか、しっかり把握をしておくのが無難ではないかと思います。

まとめ


今回は建て替えかリフォームかで迷われていたお客様がどの様に計画すればよいのか、事例を交えながらお話してきました。

どんな暮らしを実現したいかというビジョンを持つことと、実際の建物の状況を把握すること、この二点がポイントになります。

もし建て替えかリフォームかで迷った際は、ホームインスペクションのようなサービスを活用して一度建物の状態を正しく知ってみてはいかがでしょうか。

最後までお読みくださりありがとうございました。

 

「見えないところへの徹底した追求」がe-LOUPEの基本方針です。