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ホームインスペクションでの「基礎」の調査とは?

2022.12.24
岩井

WRITER

岩井 数行

二級建築士 e-LOUPEインスペクター

建築事務所を経て2010年に株式会社テオリアハウスクリニック入社。床下調査や断熱事業での現場経験を活かし、現在は戸建て住宅インスペクション事業に携わる。JSHI公認ホームインスペクター。既存住宅状況調査技術者。蟻害・腐朽検査士。

今回はホームインスペクションでの「基礎」調査についてご紹介していきます。

ホームインスペクションの調査項目には「基礎」の調査も含まれています。

調査とは具体的にどのようなことを行うのか、何を判断の基準にしているのか、詳しく解説していきます。

ホームインスペクションでの基礎調査

ホームインスペクションでは基礎の調査を

  • 配筋の確認
  • 表面の目視による確認
  • 音による確認

などの方法で行います。

配筋の確認では、基礎の内側の鉄筋が配置されている場所を調べます。表面の目視による確認では、ひび割れの有無や配管スリーブとの接合部分に不具合がないかなどを調べます。音による確認では基礎の表面に浮きや剥がれがないかどうかを調べます。

それぞれの調査には「鉄筋探査機」「クラックスケール」「打診棒」という特別な道具を使います。

また、それぞれの調査内容は写真として記録し、所見をまとめた上で報告書として提出します。

ホームインスペクションで基礎調査に使う道具

鉄筋探査機

鉄筋検査機

鉄筋が設計通りに入っていないと、本来よりも建物の強度が落ちてしまう恐れがあります。しかし、基礎の中に入っている鉄筋を目で確認することはできません。

鉄筋探査機を使えば鉄筋がある場所がわかるので、配筋が正しく行われているかを確かめることができます。

クラックスケール

クラックスケール

クラックスケールを用いた調査

基礎のひび割れを見て、放置しても問題がないのか、対策が必要なのかを判断する重要なポイントが「大きさ」です。

クラックスケールを使えば、基礎のひび割れの大きさがひと目で判断することができます。

針金

大きさ同様、ひび割れの重要度を判断するための要素に「深さ」があります。

深さはひび割れの幅からある程度の推測ができますが、より正確に計測するために用いられるのが専用の針金です。

ひび割れの中に針金を入れることで、深さを確認します。

打診棒

打診棒

打診棒を用いた調査

基礎の表面には、化粧モルタルという見栄えを良くする処理がされていることがあります。

しかし時間が経つとモルタル部分が剥がれ、基礎との間に隙間ができてしまうことがあります。この隙間のことを「浮き」といいます。

化粧モルタルが浮くと地震などの揺れで表面にひび割れが起こりやすくなります。

それ自体に構造上の問題はないものの、見た目として目立つことや内部の隙間がシロアリの侵入経路に利用されることもあるので注意が必要です。

打診棒を基礎表面に当てることで、音の違いからこのような場所がないか調べることができます。

ホームインスペクションでの基礎の不具合例

基礎表面のひび割れ

基礎のひび割れは買主様ご自身の目につく場合が多く、心配の声をいただく機会が多いです。

しかし経験上、その大半が構造に影響するものではありません。

ひび割れているのはあくまでも化粧として表面に塗られているモルタル部分に過ぎないからです。

そのことからよく「補修をしなくても建物に大きな影響が出るとは考えにくい」とお伝えさせていただいています。

一応、化粧モルタルのひび割れは再度化粧モルタルを塗ることで補修が可能です。しかし先に塗ったモルタルと全く同じ仕上がりにならない事もあり、やり直した部分だけ余計に目立ってしまう事もあります。

修繕するかどうかはしっかり施工店と相談するようにしましょう。

構造的な影響があるひび割れ

幅が広い(0.5㎜以上)ひび割れであれば、何かしらの構造的な影響のあるひび割れである可能性が高く、早目に修繕する必要があります。

ちなみに基礎のひび割れは建物の外側からですと化粧モルタルがあるため確認が非常に難しいです。

構造に影響を及ぼす恐れがあるひび割れの有無を確かめたいのであれば床下からの調査を実施することをおすすめします。

欠損・ジャンカ

基礎コンクリートの施工不良は、結果としてコンクリートの不具合につながる場合があります。ジャンカはその典型例と言えるでしょう。

ジャンカとはコンクリートの表面に隙間が生じて砂利が露出している部分をいい、打設時にコンクリートが上手く行きわたっていないことが原因で発生します。

軽微であればそれほど問題になりませんが、ある程度の大きさになると構造や耐久性に影響が出ますので、修繕する必要があります。

基礎の鉄筋の露出

主に中古住宅での指摘事項となりますが、床下の見えない場所で鉄筋が露出しているケースがあります。

基礎の内部には鉄筋が入っており正常に施工されている事により、強度と耐久性が保たれています。

通常、基礎は配管や人が通れるスペースを確保するために部分的に削られている部分があります。

新築の施工時に計画的に実施している場合は問題ありませんが、問題は後から別の業者によって基礎を削ったり内部の鉄筋を切断してしまうケースです。

その場合、鉄筋の錆びによる劣化の進行がリスクとして考えられますので、もしその様な箇所があった場合、修繕が必要となります。

基礎の配管貫通部

基礎に穴を開けて配管を通している箇所があります。

もちろんそれ自体は特に問題はありませんが、注意すべきは施工後の「隙間」です。

基礎に空けた穴と配管との間に隅間が生じているとそこから床下内部に雨水が垂れ込んできたり、ネズミなどの小動物が入り込んできたりします。

小動物侵入の被害は普通に新築でも起こりえますし、実際「夜中にネズミが床下で走っている音が聞こえる」という声を聞くこともありますので注意した方がいいでしょう。

通気口の網

最近の基礎の通気方法としては「基礎パッキン工法」という方法が取られています。

これは基礎コンクリートと土台の間に基礎パッキンと呼ばれるスペーサーをいれ隙間を造る事により床下への通気層を確保するものです。これにより基礎の全周から換気できるようになりました。

その通気層からネズミが入らない様にする為に防鼠材として網を貼る事が多いのですが、まれに網が貼っていなかったり、化粧モルタルがついて網が塞がってしまっている。といった事態があります。今後の住まう中でのリスクとなりますのであらかじめ修繕しましょう。

さいごに


今回はホームインスペクションにおける基礎の調査についてフォーカスを当ててご紹介してきました。基礎の確認は外周りであれば比較的容易に実施できる場合もあります。

ご自身で確認してみるのも良いと思いますが、機材を使った専門的な調査や床下の調査に関しては専門家に任せるのが理想です。

ホームインスペクションは建物全体をくまなく調査して回るサービスです。

ホームインスペクション全体についての解説はこちらのページでも行っていますので、もし興味を持っていただけたようでしたら併せて読んでいただけると嬉しいです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

「見えないところへの徹底した追求」がe-LOUPEの基本方針です。