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基礎断熱がある建物のインスペクションで気をつけること


WRITER
大原 卓也
一級建築士 e-LOUPEインスペクター
シロアリ被害と聞いて一般的にイメージするのは床下からの侵入だと思います。
シロアリは光や風に触れることを嫌うため、光が当たらない暗い床下から土のトンネル(蟻道)を作りながら、基礎の表面、束柱、配管などをつたい建物の木材まで上がります。しかし、それ以外にも建物に侵入する場所があります。「玄関」、「在来浴室(タイル風呂)」、「基礎断熱」などです。これらの箇所について厄介なのは、床下の目視だけでは侵入や被害に気づかない事です。
今回はシロアリの基礎断熱からの侵入やインスペクションを依頼する際の注意点についてご紹介します。
基礎断熱からのシロアリの侵入に注意
基礎は建物の構造において家を支える上で非常に大事な部位で、鉄筋コンクリートで作られるのが一般的ですが、基礎の立ち上がり部分に断熱材を取り付けている場合もあります。床下側に設置されているものを内基礎断熱、建物の外周側に設置されているものを外基礎断熱と呼びます。
基礎断熱で気をつけなければいけないのは、シロeアリが基礎と断熱材の間や断熱材の内部などの見えない場所を通り道にして建物に侵入し、木部を食べてしまう可能性があるということです。通常の調査では侵入状況を把握することが難しく、たとえ床下への薬剤散布を行ったとしても断熱材と基礎の間には薬剤が触れないため、シロアリ侵入の完全な予防が困難です。
自分の建物が基礎断熱かどうか判断するには?
図面に情報が記載がされていれば判別は簡単ですが、そうでない場合は自分で判断する必要があります。内基礎断熱は点検口から床下を覗けば確認することが出来ますが、外基礎断熱かどうかを目視で判断する事は恐らくできないでしょう。外基礎断熱は設置後に表面にモルタルを塗るので、見た目は通常の基礎と変わらなくなります(床下の内基礎断熱は見栄えを気にする必要がないのでそのような作業はありません)。基礎を叩いてみてその時の音の違いで判断する、という方法もありますが、慣れない方にはやはり難しいと思われます。ちなみに、基礎断熱を使用している建物ではその性質上、基本的に通気口や基礎パッキンは使用しません。あくまでも参考程度ではありますが、覚えておくとよいでしょう。
インスペクションは基礎断熱の有無を考慮しない
そのような箇所からシロアリが侵入するという知識は現状のインスペクションではあまり知れ渡っていないからなのか、建物状況調査の調査項目では基礎に断熱材が設置されているかどうかのチェックを行いません。そのため、インスペクションで床下も見てもらい、問題ないとのことだったので安心と思いきや、実は基礎断熱からシロアリが侵入して被害が発生していた…というケースが起きてしまう可能性も考えられます。
これらの理由から、インスペクションを依頼される場合、基礎断熱かどうかの確認も行ってもらえるのか、基礎断熱だった場合はどのような対策があるのか、事前に相談することをおすすめします。
基礎断熱だった場合
基礎断熱の中には、新築時に建物の仕様で対策がとられているケースもあります。例えばシロアリのサイズよりも細かい網で、シロアリが木部に侵入するのを防ぐ工法です。シロアリは僅かな隙間を見つけ侵入してくるので、施工の隙間や継ぎ目などによっては過信は禁物ですが、この工法をとられていれば通常よりも安全性はある程度確保出来るでしょう。基礎断熱だとわかれば、図面で確認、または施工店にこのような対策となる工事が実施されているか問い合わせてみるのもいいでしょう。
ターマトラックを用いたシロアリの調査

通常のインスペクションの目視調査では基礎断熱であるかどうかの判断程度しかできませんが、ターマトラックという特殊な機材を用いれば現在シロアリが侵入しているかを判断する目安とすることができます。この機器はシロアリの動きに反応するため、住んでいる家または購入を検討されている建物が基礎断熱で不安な場合はこの機器調査で調べることをおすすめします。
「見えないところへの徹底した追求」がe-LOUPEの基本方針です。