e-LOUPEの旬ネタコラム

  • 新築戸建て
  • 中古戸建て
  • 自宅向け

ホームインスペクションで分かる「傾き」!傾斜の調査を解説

2023.02.01
鳥居

WRITER

鳥居 龍人

二級建築士 e-LOUPEインスペクター

建築事務所を経て株式会社テオリアハウスクリニックに入社。前職での現場監督経験から、施工から設計まで幅広い知識と経験を持つ。現在はその経験をもとに戸建て住宅のインスペクション業務に携わる。JSHI公認ホームインスペクター。既存住宅状況調査技術者。

よくワイドショーなどでも取り上げられる住宅の傾き。

ビー玉を床へ転がした建築士が「これはかなり傾いていますね!」と言っているのを見たことのある方は多いのではないでしょうか。

「建物が傾いていないかどうか」というのは、やはり、多くの方が興味をもたれているようで、ホームインスペクションにお申し込みいただいた方からよくいただくご質問です。

実際、傾斜の有無は建物の構造にも関わってくる問題であり非常に重要です。

今回はそんな建物の傾斜について、ホームインスペクターとしての視点から詳しく解説していきます。

そもそも建物はなぜ傾く?


まず知っておいてほしいのが建物が傾く原因です。

建物の傾斜の原因はかなり様々ですが、その中でも代表的なものをお伝えします。

沈み込みやすい地盤

建物の傾きの原因として地盤があります。

地盤の中でも傾きに気をつけてほしいのは擁壁を建てるなどして地面を埋め立てて作る「盛土」です。

盛り土は別の場所から持ってきた土を乗せて固めて作るため、どうしても地面の硬さが劣りやすいのです。もちろん造成した土地では必ず地盤の締固めも行われますがそれが甘いと建物に傾きが生じてくる可能性も大きくなります。

一応地盤の強度は住宅を建てる前に調査を行います。

一般的な調査だと「ボーリング調査」と呼ばれる方法がありますが、ボーリング調査はその土地の中の代表的な箇所でしか行わないため、たとえ調査結果が問題なくてもそれが建物全体に言えるかどうかは判断が難しいところです。

特に崖地に建てられている住宅や川や池の側などであれば傾きやすい傾向があるため注意が必要です。

また、地盤の強さの見当をつけるには元々どういった地形だったのか(沼だったのか、田んぼかなど)を認識しておくのもいいと思います。(昔の土地の名前の決め方に「氵」さんずいが入っている土地は元々水に関わっていた場所というものがあるようです)

施工した職人の腕


殆どの職人さんは水平や垂直を細かく確認し建物を作っています。しかし中には少し手を抜く職人がいることも事実です。

悪い考えを持っている職人が立てた建物では様々な不良が散見されます。それが結果的に建物の傾きに繋がってしまうことがあるのです。

たとえば基礎と土台と固定する土台アンカーのナットが締められていなかったり、筋交いが必要な箇所になかったり・・・

こういった構造に直接関わる箇所の不具合は地震が起きた際に普通の住宅よりも揺れやすくなるため、家全体が大きくたわむことで傾斜が生まれることがあります

ちなみに最近ではこういった金物締め忘れなどを無くし品質を適切にするため現場監督が目を光らせており、締め終わった金物には確認後にスプレーで色をつけて2重チェックを行っている業者もいます。

もし小屋裏や天井裏を覗いてみて金物にスプレーが吹いてあれば2重チェックしてくれたのかなと少し嬉しくなりますね。

細かいことではありますがこういうことの積み重ねで良い住宅が建つんだと感じます。

木材の反り

日本の多くの建物は木造住宅ですが、「木の性質」が傾きの原因となる場合もあります。

木材は時間の経過とともに乾燥し、その乾燥に伴い少しずつ形が変わります。その結果、床の傾斜や軋みなどが発生することがあるのです。

これを味と捉えるか不具合と捉えるかは人によって変わりますが、あまりにもきつい傾斜であれば、つまづきや三半規管の敏感な方によっては気持ち悪さなども引き起こすため注意が必要です。

ホームインスペクションでの傾き調査


建物の傾きについての大まかな原因を知っていただいたところで、ここからは私たちホームインスペクターが傾き調査で何を行っているのか、詳しくお話ししていきます。

指摘事項かどうかの基準

ホームインスペクションでは主に、

・床
・壁
・柱

の3つの部位について傾斜を測定します。このとき、指摘事項として報告するかどうかの目安の数値は品確法の基準に基づいて3/1000ミリ以上です。

ちなみにこの数字は「1メートルで3ミリの傾斜」であることを意味しますが、実際これくらいの傾きだと多くの方が違和感を感じると思います。

基準だけでは判断できない場合も

先ほど一応の基準として3/1000ミリ以上という目安をご紹介しましたが、この基準を下回っていれば必ず問題がないというわけではありません。

たとえば3ミリ以下だったとしても全体が同じ方向に傾いている状態であれば、数値が小さかったとしても注意が必要となります。

重要なのは部分的な傾斜ではなく「全体的な建物の」傾斜なのです。

1ヶ所の測定結果だけでは判断できない


反対に、建物の1箇所で測って水平にならなかった場合もそれだけでは問題があるかどうかの判断はできません。

お客様からはよく「自分で測ってみたんだけどこれは傾いているんじゃないの?」というご質問をいただきます。

冒頭で少し触れたビー玉を転がしてみる方法を自分でも試してみたら転がった!と心配されている方もいらっしゃいました。

しかし床の傾斜が全くない住宅はほぼ存在せず、多少の角度が付いています。簡易的に確認するにはいいかもしれませんが鵜呑みにしないように注意しましょう。

ちなみに我々が傾斜を確認する際には床であれば3m、壁であれば2mで傾斜を測定し3/1000ミリ以上かどうかを確認します。

部分的な傾斜であれば施工時の誤差で生じている場合も考えられます。

傾きが出たからといってすぐに「建物がダメだ」と心配するのではなく、どの程度の傾きがどの範囲で起きているのか確認しておくといいでしょう。

傾斜の不具合は修繕できる?

なお、後から直したいと考えた場合、軽微であれば床の張替えなどでごまかすこともできますが全体の歪み、地盤の問題から傾斜を直そうとした場合はジャッキアップや基礎の補強工事のなど、数百万円から一千万円以上する場合もあります。

施工時からの著しい不具合であれば施工したハウスメーカーに相談ができるかもしれませんが、中古住宅や長年住まわれている自宅などであれば対応ができないと一蹴されてしまうかもしれません。

倒壊してしまうほどの傾きなのか、傾斜によって建具などへの影響が無いかなども加味しつつどの程度まで修繕するかはやはり予算の都合によるところが大きくなるでしょう。

また傾斜の補修工事を行っても今後傾斜が起きないとも言えないため、特に地盤が絡むような傾斜の場合、今後どのように付き合っていくかを判断する必要が出てくると思われます。

まとめ

今回は建物の傾斜について詳しくご紹介してきました。(ホームインスペクション全体についてはこちらのページでも詳しく解説しています)

購入する建物が傾いてしまうリスクを減らすためにも、施工店の評判や地理的な情報などは事前に確認しておくべきでしょう。

また、「現時点で傾きの兆候が見られるか」は最も確実な情報となりますので、購入を考えた建物ではやはり傾斜の測定をしっかりと確認しておくことをおすすめします。

 

「見えないところへの徹底した追求」がe-LOUPEの基本方針です。