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ホームインスペクションの小屋裏調査、”進入調査”で何が変わる?

2023.02.13
鳥居

WRITER

鳥居 龍人

二級建築士 e-LOUPEインスペクター

建築事務所を経て株式会社テオリアハウスクリニックに入社。前職での現場監督経験から、施工から設計まで幅広い知識と経験を持つ。現在はその経験をもとに戸建て住宅のインスペクション業務に携わる。JSHI公認ホームインスペクター。既存住宅状況調査技術者。

ホームインスペクションでは小屋裏調査は点検口からの目視のみで直接進入は行わない、もしくは直接進入による検査はオプション制で高額な別料金が必要、というケースが一般的です。

この記事では

  • なぜ多くのインスペクション業者は小屋裏の進入調査が別途料金なのか
  • 進入調査と点検口からの調査の違い

などをお話していきます。

なぜ進入調査には別途料金が必要なの?

屋根裏のインスペクション
小屋裏に進入してのホームインスペクションには多くの危険が伴うことが理由として考えられます。

小屋裏は足場が非常に不安定ですし、人が乗っても大丈夫な部分は”梁”というごく限られた部分しかありません。

もし乗ってはいけない天井材に体重をかけてしまうと建物を破損したり、最悪の場合は下の階まで落下して調査員や依頼主の重大な怪我に繋がるかも知れません。

そのため、進入調査は慎重に行う必要があります。

他にも夏場は屋根で受けた熱が小屋裏に充満するため、外気以上の高温となり、いわばサウナ状態のため熱中症の危険があります。

こういった特殊性ゆえ、通常行う調査に+オプションとして料金を高く設定する場合が多いのです。

小屋裏の不具合はどんなことがある?

しかしながら小屋裏は問題が起きやすく発見も遅くなりがちな、注意が必要な場所です。

いくつかの具体的な指摘例を挙げてみます。

雨漏れ


明らかに雨漏れしているのであれば室内の調査時に天井の雨染みなどでわかるかと思いますが大多数の雨漏りはじわじわと染みが広がることが一般的です。

またカビやシロアリを呼び込む原因となるため濡れた木材には注意が必要です。

構造部材や金物の不備

日本は地震の多い国です。建物には地震対策が施されています。

例えば、弱点となりうる部材同士が継ぎ合わさっている箇所には金物やボルトを用いて容易に外れないようにしています。

しかし、木材は乾燥収縮することから経年で緩みにより外れやすくなりますし、そもそも施工時に締め忘れている場合もあります。

施工不良

本来は必要だったはずの部材がない、必要な長さに足りていない、換気ダクトが途中で外れている、などです。

普段見えない場所にあるので、誤った施工状態が気づかれることもなく何年も放置され、気づいた時には保証してくれるはずの施工店が潰れてしまっている・・・というパターンもあります。

断熱性能の低下


外からの熱気や冷気を遮って冷暖房の効きを維持する働きをもつ断熱材ですが、隙間だらけだったり、裏表逆に設置されていたり、ひどい場合には端っこに積み上げられているだけということもあります。

また、設備電気にかかわる職人さんは断熱材を重要視していない傾向があり、例えば天井のダウンライトの施工を行う際などは断熱材が邪魔になるためめくってどかしてそのまま・・・というケースが多い印象があります。

進入調査と点検口からの調査の精度の違い

これまで小屋裏で見つかる不具合の一部を紹介しましたが、ここで疑問になるのはやはり「点検口からの調査のみでこれらの不具合は見つけられるのか?」という事です。

結論から言うと、点検口からの調査では雨漏れの有無はもちろん、その他の不具合についても、ごく一部しか確認することができません。

小屋裏の見え方

そのことをより視覚的に感じてもらうため、実際に点検口から小屋裏を覗いた写真を撮影してみました。

また、見える範囲を図にするとこのようになります。

範囲

やはり梁や小屋束といった部材がある事から、見ることのできる範囲は限られており、ライトを当てても暗くて遠くまで見きれません。

また、運良く点検口から水染みなどを発見できた場合でも、直接触れたり含水率計を使わないことにはそれが現在進行しているものなのか、過去に起きたものなのか判断することは難しいでしょう。

点検口からの小屋裏調査で指摘が見つかりにくい”隠れた”理由

点検口からの調査で指摘が見つかりにくいのは調査範囲が限られていることに加えて実はもう1つ、隠れた理由があります。

それは建物を管理している人間の立場を考えればおのずと分かるのではないかと思います。

住宅を建てる際、現場を監督している方や建物を仲介する不動産の方も点検口から周囲を確認するくらいは行っています。

なので点検口付近の不具合はホームインスペクションをする時点で既に誰かが発見し、修繕済であることが多いのです。

しかしこれが作業が困難な誰も入りたがらない小屋裏の奥側となると状況はまた異なり、不具合が潜んでいることは決して珍しくはありません。

まとめ

今回は小屋裏のホームインスペクションについて、どのような指摘事項が発見され得るのか、点検口からの調査と進入調査にはどのような違いがあるかなどをご紹介してきました。

もちろん小屋裏調査でオプション料金を支払うかどうかはどの程度の調査精度を求めるかで変わってくるでしょう。

しかしいずれにしても、こういった背景があることは知っておいて損はないと思います。

今回ご紹介した内容が少しでもお役に立てれば幸いです。

ホームインスペクションについてのより詳しい情報はこちらのページでもお伝えしていますのでもし興味があれば併せて参考にしていただけると嬉しいです。

最後までお読みくださりありがとうございました。

「見えないところへの徹底した追求」がe-LOUPEの基本方針です。