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築30年の戸建てはアリ?購入のメリットと注意点を解説

2023.08.31
岩井

WRITER

岩井 数行

二級建築士 e-LOUPEインスペクター

建築事務所を経て2010年に株式会社テオリアハウスクリニック入社。床下調査や断熱事業での現場経験を活かし、現在は戸建て住宅インスペクション事業に携わる。JSHI公認ホームインスペクター。既存住宅状況調査技術者。蟻害・腐朽検査士。

こんにちは。e-LOUPEの岩井です。

今回は築30年程度の物件の購入を検討されている方のために、メリットや注意点を整理してみようと思います。

築30年の戸建て購入のメリット

新築・築浅より安い

築30年の戸建ては新築に比べて価格が比較的低い傾向にあります。

公益財団法人 東日本不動産流通機構による2021年の首都圏の不動産流通市場についてのレポートを参照してみましょう。

成約した築0〜5年の戸建て住宅の平均価格が4500万円であるのに対し、築26〜30年の物件の平均価格は3000万円となっておりその差額は1500万円、新築に近い建物のおおよそ66%程度の価格で取引されていることが分かります。

築30年の物件を購入すれば、予算を抑えつつ広い敷地や十分なスペースを持つ家を手に入れることができる可能性があると思います。

ちなみにですが住宅の価格の高い安いを判断する際のポイントとして、同じ地域にある土地や建物の大きさ、駅からの所要時間などの条件が一致している物件と比較するようにしましょう。

すでにリフォーム済の物件であったり、定期的なメンテナンスを実施していることが分かっている物件ほど売値が高くなる傾向があるのでそういった条件も加味するといいと思います。

自分好みのアップデートができる


新築住宅の場合、すでに完成している建売住宅などをのぞいて契約前に実際の建物を確認することができません。

こちらの診断事例でもご紹介していますが、新築住宅で事前に見ていた図面から想像していた部屋と実際の部屋とで大きな違いがあった、ということもあるようです。

一方、築30年ほどの建物であれば実際の状態を見学しつつ、自分の好みに合わせてリノベーションを行うことができます。

購入費用が抑えられていることから、築20年ほどの物件と比べても改築の費用面での敷居をより低くできるのではないかと思います。

安定した生活環境

築30年の住宅が建っているのは、いわゆるパワービルダーが大きな土地を買って分譲したような新興住宅地ではなく、既存の住宅地に位置していることが多いです。

そのため、地域に根付いたコミュニティが形成されていたり、周辺のインフラストラクチャーや交通網が発展していたり、ショッピングセンターや学校、公園などが近くにあるケースが多く、より安定した生活環境が望めるのではないかと思います。

築30年の戸建てを買うときの注意点

安全性が不透明な建物が多い

その建物が現在どの程度の耐久性を持っているのかは事前に確認しておきたいところだと思います。

しかし築30年の住宅では建築基準法に基づく完了検査を受けた証でもある完了検査済証を売主が紛失してしまっており安全性が確認できない、というケースが多いです。

一応自治体で建築確認台帳記載事項証明を発行してもらうという方法もありますが、自治体に記録が残っていない場合も多いです。

また耐震診断を実施しようにも耐力壁の位置や仕様を確認するための図面を売主が持っておらず、低い精度の検査しか行えないことが多いのもよくある問題です。

そもそも前提として30年前と今とでは住宅に対する価値観が大きく異なります。

とにかく目先の需要に追いつかせることだけを考え、長く住めるかどうかなんて考えずに建てられた住宅も決して少なくないと思います。

もし構造部分に欠陥があった場合は想定よりも低い強度しか得られませんし、地震などでの倒壊リスクも高くなります。

耐久性において本当に信頼ができる家なのか、リノベーションをするに足りる物件なのかはしっかり事前に調査しておいた方がいいと思います。

購入後の改修は高額になりがち


築30年の住宅をリフォームするとなった時に多くの人が真っ先にリフォームしたいと思う箇所は台所や洗面所・浴室です。

しかしこういった水回りの設備は高額になることが多く、当初の予算ではやりたかったリフォームを諦めないといけない・・・となるケースも多いです。

また建物の状態を事前に把握せずに購入してしまうと、後になって雨漏りやシロアリ被害といったトラブルが発覚して思わぬ出費に繋がってしまうリスクが築30年の住宅では特に高くなります。

現状を正確に認識した上でのリフォーム、リノベーションが望ましいですね。

見えるところだけリノベーション

以前調査に伺ったリノベーション済みの築古物件では、今どきのおしゃれな内装に天井を大きく抜いた大開口の物件でしたが床下や小屋裏を調べてみると構造に関わる梁や柱はそのまま一切手を加えずに施工されていました。

それだけであれば問題はないのですが、一部の木材は白蟻による被害を受けていましたがそのまま使用されていた為、構造への影響が考えられました。

「とりあえず見た目だけ綺麗になっていれば購入者は出るだろう」という意図を感じざるを得ませんでしたが、残念ながら購入者が建物の実態を正しく把握するのは実際とても難しいです。

リノベーション時の施工写真が残っていないかを念のため確認してみるのがいいと思います。

契約不適合責任は基本的に免責

シロアリの被害
新築住宅であれば売主は買主に対してその住宅の品質を10年間保証することが法律で義務付けられています。

中古住宅であっても、築浅な物件であれば引き渡しから3ヶ月ほど(売主が不動産業者の場合は2年であることが多い)は売主が契約不適合責任を負うことが多いです。

しかし築30年の住宅では「不具合なんてあって当たり前」という考え方が一般的で、契約不適合責任を免責とする契約である場合が多く、購入後に万が一のトラブルが発生したとしてもサポートは望めません。

一応、売主が不動産業者の場合は2年間の契約不適合責任を負うことが一般的ですが、彼らは住宅を売るプロであるため「契約時にしっかり説明した」と言いくるめられてしまうケースが多いです。

対策として、やり取りを文章で行ったり音声を録音するなど、何かしら記録を残しておくことや、ホームインスペクションを通して現状を正しく把握しておくのがおすすめです。

法律上、建替えが行えない場合がある

もし、「しばらく住んだ後に新しい家を建てよう」と取り壊すことを前提に築30年の戸建てを購入する場合に注意したいのが現行法規に適合した建物かどうかです。

現行法を満たしていない住宅の場合、建て替えた時に今の家よりも小さな家しか建てられない可能性や場合によっては再建築不可となり大規模なメンテナンス自体が行えない場合があります。

建て替えも視野に入れる場合は事前に法律をしっかりと確認しておいた方がいいでしょう。

さいごに


今回は築30年程度の物件を購入する際のメリットと注意点についてご紹介させていただきました。

昨今の物価高騰やDIY、リフォーム前提での購入という考え方が一般的になってきたことから中古住宅の市場での取引量は増えてきています。

しかし、中古住宅はその年数によって注意すべき点が大きく変わってきます。

購入予定の物件の状態を正しく把握し、購入の是非も含めて慎重に判断していく必要があります。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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